
企業が持続的に競争優位を築くためには、自社を取り巻く「業界の競争環境」を的確に把握することが不可欠です。その分析に活用される代表的な手法がファイブフォース分析です。
この記事では、ファイブフォース分析の基本概念から実施方法、活用事例までをわかりやすく解説します。
■ ファイブフォース分析とは?
ファイブフォース分析は、ハーバード大学の経営学者マイケル・ポーターが1980年に提唱した戦略分析手法で、業界の競争構造を5つの要因(フォース)から評価します。
この手法を使えば、業界での収益性を左右する要素を体系的に把握し、自社の戦略立案に活かすことが可能です。
■ 図解:ファイブフォース分析の構造
↑ 新規参入の脅威
┌───────────────┐
売り手の交渉力 → 業界内の競争 ← 買い手の交渉力
└───────────────┘
↓ 代替品の脅威
■ 5つの競争要因とその意味
① 業界内の競争(既存競合)
- 競合企業同士の争いが激しいほど、価格競争が生じやすくなり、利益率が圧迫されます。
- 市場の成長鈍化や製品差別化の難しさが、競争を一層激化させます。
例:航空業界、家電量販店など
② 新規参入の脅威
- 新規プレイヤーが容易に参入できる業界では、競争が激化しやすくなります。
- 参入障壁(初期投資、ブランド力、規制など)の高さが鍵を握ります。
例:D2Cブランドが増える化粧品業界など
③ 代替品の脅威
- 顧客が別の商品・サービスで代替できる選択肢を持つ場合、業界の競争力が弱まります。
- 技術革新やライフスタイルの変化によって代替品が登場することも。
例:動画配信がビデオレンタルを代替、カーシェアが自家用車を代替
④ 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 原材料や部品の供給元が限定されている場合、サプライヤーの力が強くなり、仕入価格が上昇します。
- 代替調達先が少ない場合や、サプライヤーが高い専門性を持つ場合は特に影響が大きくなります。
例:特許部品を扱うメーカーなど
⑤ 買い手(顧客)の交渉力
- 顧客が多くの選択肢を持ち、価格に敏感である場合、企業は価格を下げざるを得ません。
- 製品が差別化されていない、または買い手が大手企業の場合、交渉力はさらに高まります。
例:大手流通業者が取引先メーカーに価格交渉を迫るケース
■ ファイブフォース分析の進め方
ステップ1:業界の定義
分析対象とする「業界」を明確に設定します。範囲が広すぎると要素が分散し、狭すぎると見落としが生じます。
ステップ2:情報収集
競合他社、顧客、サプライヤー、市場動向などの情報を集めます。業界団体のデータやインタビューなども有効です。
ステップ3:競争要因の評価
5つの要因それぞれについて「高・中・低」などで強さを評価し、視覚化(例:レーダーチャート)することで全体像を把握しやすくなります。
ステップ4:戦略立案
分析結果を踏まえ、どの要因に対してどう対応するか戦略を策定します。
- コスト競争への対策
- 差別化の強化
- 新規参入への備え など
■ 活用事例
● 成功事例:スターバックス
スターバックスは、競争の激しいコーヒー業界において、ブランド・空間体験・商品ラインナップの差別化で競争優位を確立。買い手の交渉力を抑え、価格競争に巻き込まれずに収益を確保しました。
● 失敗事例:ブロックバスター
ビデオレンタル大手ブロックバスターは、ネットフリックスの登場という代替品の脅威を見過ごし、デジタル配信への対応が遅れました。結果的に、競争力を失い破綻に至りました。
■ 分析時の注意点と成功のコツ
- 特に重要な3要因を意識
「業界内の競争」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」は、企業の売上・収益に直結するため、優先的に分析すべきです。 - 客観性の確保
複数人でディスカッション形式で進めると、主観に偏らずバランスの取れた評価が可能です。 - 他のフレームワークと併用
PEST分析やSWOT分析と組み合わせることで、より立体的な戦略立案が可能になります。
■ ファイブフォース分析と他手法の違い
分析手法 | 主な対象 | 特徴 |
---|---|---|
PEST | 政治・経済・社会・技術(マクロ環境) | 外部環境全体の変化を把握する |
SWOT | 自社の強み・弱み・機会・脅威 | 内外の要因を統合的に分析できる |
ファイブフォース | 業界構造・競争要因 | 業界内の競争力や収益性を詳細に分析できる |
■ まとめ:業界を知れば、勝ち筋が見える
ファイブフォース分析は、企業が市場で勝ち残るために、「競争環境の地図」を描くツールです。競争の激しさや業界構造を見極めることで、リスクに備え、強みを活かした戦略が構築できます。
ぜひ自社の事業戦略を考える際に、本分析を取り入れ、より精緻で実践的な意思決定に役立ててください。