
■ はじめに:経営者を縛る“個人保証”という重荷
中小企業の借入では、ほとんどのケースで
「経営者本人の個人保証」 が求められます。
しかし、経営が悪化した場合、
- 自宅を手放す
- 個人資産を差し押さえられる
- 破産に追い込まれる
など、経営者の人生そのものを揺るがすリスクを抱えます。
こうした問題を解決するために整備された制度が、
**「経営者保証に関するガイドライン」**と
**「経営者保証解除支援(405事業・早期経営改善計画の付帯支援)」**です。
経営改善計画と並行して進めることで、
会社と経営者の双方を守る“再出発の基盤”を作ることができます。
■ 経営者保証に関するガイドラインとは?
金融庁と中小企業庁が策定した、
経営者保証を不要とするためのルールです。
銀行との交渉における“公式ルール”であり、
経営者の個人保証の負担軽減を目的としています。
このガイドラインに沿って、
- 保証不要の新規融資
- 既存保証の解除
が実施されます。
■ 経営者保証解除の対象となる企業
以下の3つを満たす企業は、保証解除の可能性があります。
① 財務状況の透明性
- 月次決算
- 資金繰り管理
- 経営改善計画の実行
など、「数字の見える化」ができていること。
② 経営と個人の分離
- 社長個人と会社のお金が混在していない
- 経営者への過大な貸付や私的流用がない
- 経営者報酬が適正
③ 資金管理の健全性
- 資金繰りの悪化を早期に報告
- 不正会計や粉飾がない
- 税金滞納がない
💡ポイント
「完璧な黒字企業」である必要はありません。
大切なのは “ルールに沿って経営されていること” です。
■ 経営者保証解除支援を使うメリット
✔ 経営者個人のリスクが大幅に減る
自宅・個人資産を守りながら、会社再建に集中できます。
✔ 新規融資が受けやすくなる
保証なしでの融資は「財務管理がしっかりしている企業」と評価されます。
✔ 事業承継にも有利
後継者が保証を引き継ぐ必要がなくなるため、承継がスムーズになります。
✔ 廃業時にもダメージを最小化
個人保証がなければ、会社整理の影響を最小限で済ませられます。
■ 経営者保証解除支援の流れ
405事業・早期経営改善計画と連動して進めるのが一般的です。
1️⃣ 経営状況の整理
認定支援機関が財務・資金管理状況を分析。
2️⃣ 経営者保証解除に向けた条件確認
ガイドラインに沿って、
・経営と個人の分離
・財務の透明性
などの要件をチェック。
3️⃣ 計画策定(経営改善計画)
改善策・収益計画・資金繰り計画をまとめる。
4️⃣ 金融機関と協議
銀行担当者と保証解除の可否を協議し、必要資料を提出。
5️⃣ 弁護士支援(必要に応じて)
405事業では 弁護士費用の3分の2(上限10万円) が補助されるため、
交渉・手続サポートを依頼できる。
6️⃣ 保証解除の決定
金融機関が承認すると、保証契約が解除されます。
■ 金融機関が見ている“保証解除の判断ポイント”
- 個人と会社の資金が明確に分かれているか
- 計画が実現可能で、再建の見込みがあるか
- 経営者が不正・粉飾・滞納をしていないか
- 月次管理ができており、財務状況が透明か
- 専門家のモニタリングが継続されているか
💬 特に重視されるのは 「ガバナンスの健全性」。
数字より“信頼”が評価されます。
■ 経営者が準備しておくべき3つのこと
① 個人と会社のお金を分ける
経費と私的な出費を厳密に区分する。
これだけで信頼度が大きく変わります。
② 月次決算・資金繰りの継続
毎月の数字を出せる企業は保証解除の有力候補です。
③ 経営改善計画の実行
「実行」と「報告」が揃って初めて、保証解除の交渉ができます。
■ よくある質問Q&A
Q1:赤字でも保証解除できますか?
➡ 可能です。 重要なのは改善の実行・ガバナンス整備。
Q2:保証を外しても追加融資は受けられますか?
➡ 受けられます。 むしろ管理体制が評価されプラスになることも。
Q3:どれくらいの期間で解除できますか?
➡ 早ければ 3か月〜半年。
405事業のモニタリングを経て解除されるケースも多いです。
■ まとめ:保証解除は「経営者の再スタート」
経営者保証解除は、
経営改善計画と並ぶ “経営者を守るための再建支援” です。
- 個人のリスクを減らす
- 新たな一歩を踏み出しやすくする
- 会社と経営者の関係を健全にする
- 銀行からの評価を高める
再建の成功率を高めるためにも、
経営改善計画とセットで進めるべき重要テーマと言えます。


