企業の競争力を高めるうえで、欠かせない指標の一つが「労働生産性」です。従業員がどれだけ効率よく成果を出しているかを数値化することで、経営判断や改善施策の根拠となります。この記事では、労働生産性の基本概念から種類・計算方法、向上のための具体策までを整理して解説します。


労働生産性とは?

労働生産性とは、従業員1人あたり、または労働時間1時間あたりにどれだけ成果(付加価値)を生み出したかを示す指標です。数値が高ければ効率的な経営ができていることを示し、低ければ改善の余地があることを意味します。


労働生産性の2つの種類

労働生産性は大きく分けて2種類に分類できます。

  1. 物的労働生産性
    生産量やサービス提供量で測る方法。製造業やサービス業でよく用いられます。 計算式物的労働生産性 = 生産量 ÷ 労働量
    5人が3時間で15個の製品を作った場合
    • 一人当たり:15 ÷ 5 = 3個
    • 1時間あたり:15 ÷ (5×3) = 1個
  2. 付加価値労働生産性
    売上から原価などを差し引いた付加価値で評価する方法。利益に直結する視点から用いられます。 計算式付加価値労働生産性 =(売上 - 諸経費)÷ 労働量
    売上30,000円、経費6,000円、3人が2時間勤務した場合
    • 一人当たり:24,000 ÷ 3 = 8,000円
    • 1時間あたり:24,000 ÷ (3×2) = 4,000円

図解:労働生産性の分類

労働生産性
 ├─ 物的労働生産性(生産量で評価)
 └─ 付加価値労働生産性(付加価値で評価)

労働生産性の判断基準

明確な統一基準はありませんが、目安として 中小企業の場合「1人あたり年間1,000万円以上の付加価値」 が高水準とされることがあります。
判断のポイントは以下の通りです。

  • 自社の過去との比較(推移を確認)
  • 同業他社との比較(市場平均を参照)
  • 業種の特性(製造業、サービス業、小売業などで異なる)

労働生産性向上のメリット

1. コスト削減

少ない人員で成果を出せるようになれば残業時間が減り、人件費の抑制につながります。

2. 利益率の改善

同じ労働力で多くの付加価値を生み出せれば、利益率が向上します。人手不足の時代には特に重要です。

3. 働きやすさの向上

生産性が高まることで労働時間を短縮でき、従業員のワーク・ライフ・バランス改善や定着率向上につながります。


労働生産性を高める方法

1. 業務の標準化

マニュアル化により作業のばらつきを減らし、品質と効率を安定させます。

2. 業務の自動化

  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):パソコン業務の自動化
  • FA(ファクトリー・オートメーション):製造工程の自動化

定型作業を自動化することで、ヒューマンエラーを減らし、時間短縮を実現します。

3. 従業員のスキルアップ

OJTや研修によるスキル向上で、業務の精度とスピードを高めます。

4. 労働環境の整備

テレワークやフリーアドレスなど柔軟な働き方の導入が、生産性の向上に効果的です。
近年の調査では、テレワーク導入企業の方が未導入企業よりも労働生産性が高い傾向が見られます。


図解:生産性向上のアプローチ

労働生産性を高めるには?

① 業務の標準化
② 業務の自動化(RPA・FA)
③ スキルアップ
④ 労働環境の改善(テレワーク等)

労働生産性向上は「働き方改革」そのもの

労働生産性の改善は、単に業績を高めるだけでなく、残業削減や有給休暇の取得促進など、働き方改革の推進にも直結します。

企業が持続的に成長するためには、生産性の現状を把握し、改善の一歩を踏み出すことが不可欠です。