企業の経営効率を評価するうえで欠かせない指標のひとつが「ROA(総資産利益率)」です。本記事ではROAの概要や計算方法、業界別の目安、改善方法に加え、ROE(自己資本利益率)との違いについても解説します。財務諸表を活用して企業分析を行いたい方にとって、有益な情報となるはずです。


1. ROA(総資産利益率)とは?

ROA(Return On Assets)は、企業が保有するすべての資産を使って、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを表す指標です。

● 計算式:

コピーする編集するROA(%)= 利益 ÷ 総資産 × 100

「利益」には、当期純利益・営業利益・経常利益のいずれかを用います。

たとえば、以下のようなケースを比較してみましょう。

企業総資産利益ROA
A社1,000万円50万円5%
B社100万円9万円9%

B社は規模は小さいものの、資産を有効活用していることがわかります。


2. ROAで用いられる利益の種類

① 当期純利益

企業の最終的な利益。株主の視点で重要。

② 営業利益

本業の収益性を示す利益。資産運用効率をより具体的に表せる。

③ 経常利益

本業+営業外収益を含む総合的な利益。継続性のある収益力を示す。

使用する利益によってROAの意味合いが変わるため、目的に応じて適切な数値を選ぶことが重要です。


3. ROAから見える経営の実態

ROAを確認することで、次のようなことがわかります。

  • 企業が資産を有効に使っているか
  • 成長に向けた投資が利益に結びついているか

例えば、設備投資後に一時的にROAが下がることがありますが、これは将来の利益拡大に向けた準備とも捉えられます。


4. ROAの目安と業界平均

ROAの一般的な目安は「5%以上」が好ましいとされますが、業界によって大きく異なります。

● 業界別ROAの目安(参考:経産省 2020年度)

業界ROA(%)
全体平均2.9
製造業3.4
ソフトウェア業7.7
小売業2.5
情報通信業6.1
飲料・たばこ製造業4.1

業界特性に応じて目標水準を定め、同業他社との比較がポイントです。


5. ROAを見るときの注意点

● ① 先行投資の影響

設備投資や人材投資で総資産が一時的に増えると、利益が変わらなくてもROAは低下します。

● ② 本業以外の影響

株式評価益や為替差損益など、営業外の影響でROAが変動するケースもあります。「その他の包括利益」を確認すると実態を把握しやすくなります。


6. ROAを改善する方法

ROAの改善には、以下の3つの方向があります。

● ① 収益性を上げる(売上高利益率の向上)

施策内容
商品価格の見直し高付加価値商品の展開による価格アップ
コスト削減広告費や原材料費など販管費の見直し

● ② 効率性を上げる(資産回転率の向上)

コピーする編集する資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産

使われていない資産(遊休地、保養所、不良債権など)を整理することで、効率を高められます。

● ③ 総資産を減らす

在庫削減や不要な設備の売却、借入金返済などで総資産をスリム化するのも有効です。


図解:ROAが高い企業 vs 低い企業

以下はROAのイメージ比較です:


7. ROEとの違いと関係性

ROAとよく似た指標に「ROE(自己資本利益率)」があります。

● 計算式:

matlabコピーする編集するROE(%)= 純利益 ÷ 自己資本 × 100

自己資本は返済不要な資金(株主資本)を指し、ROEは株主にとっての収益性を示します。一般的な目安は10%以上とされます。

● 注意点:

ROEが高くROAが低い場合、過度な借入による資金調達(財務レバレッジ)でROEが上がっている可能性があります。この場合、財務健全性にリスクがあるため注意が必要です。


8. ROEを高める方法

  • 資産回転率を上げる(ROAと同様)
  • 財務レバレッジを上げる(借入活用)

ただし、後者はリスク管理が必須です。自己資本とのバランスを常に見極める必要があります。


まとめ:ROAとROEを組み合わせて経営を評価しよう

ROAは企業が資産をどれだけ効率的に利益に変えられているかを示す重要指標です。業界平均や過年度比較、そしてROEとのバランスをみることで、より実態に即した企業評価が可能になります。

両者を組み合わせて分析することで、経営の健全性・収益性・効率性の全体像が明らかになります。財務分析の基礎として、ぜひ習得しておきましょう。