企業の収益性や資本効率を評価する際、よく使われる指標に「ROE(自己資本利益率)」と「ROA(総資産利益率)」があります。本記事では、両者の違いや計算方法、分析のポイント、そして改善策について、図解付きでわかりやすくご紹介します。


1. ROEとROA、何が違う?

ROEとは?

**ROE(Return on Equity:自己資本利益率)**は、株主が提供した自己資本を活用してどれだけ利益を生み出したかを示す指標。つまり、株主視点での収益効率を測るものです。


ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROAとは?

**ROA(Return on Assets:総資産利益率)**は、企業が保有する全資産(自己資本+他人資本)を使って、どれだけ利益を出しているかを示します。財務構造を含めた経営効率の指標です。


ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

図解:両者の違い

              売上高
                 ↓
               当期純利益
               /       \
       ÷ 自己資本       ÷ 総資産
         ↘ ROE             ↘ ROA

2. 分析のポイント

  • ROE が高い=株主にとって効率よく利益を生み出している良い指標。ただし、借入が多い場合は自己資本が少なく見えてしまうため、値だけでは判断できません。
  • ROA は資産全体の収益効率を示し、財務構造の影響を受けにくい。素直な経営効率の指標として信頼できます。

バランスを見る図解

ROE > ROA :借入などでレバレッジが効いているケース(リスクあり)
ROE ≈ ROA :健全な資本運用
ROE < ROA :借入コストなど営業外損失が重いケース(要改善)

3. 目安・最近の傾向

  • ROEの目安:一般に 8〜10%以上 が良いとされます。アメリカ企業ではこれを上回る水準が多い一方、日本企業は平均で**約9%**と少し低めの傾向(直近の上場企業)があります。
  • ROAの目安:約5%以上が優良とされますが、日本では過去数十年間、多くの場合でこの水準を下回ることが多かったです。ただし、近年は改善傾向も見られています。

4. それぞれ、どう改善する?

指標改善ポイント
ROE・利益向上:売上増やコスト削減など
・自己資本削減:自社株買いや配当増(ただし安定性とのバランスが重要)
ROA・利益向上:同上
・資産スリム化:不要資産の売却、在庫圧縮、設備の最適化

5. まとめ:両指標を使い分ける視点

  • ROE は「株主視点の収益性評価」に適した指標。投資判断に強い影響を与えます。
  • ROA は「企業全体の経営効率」を表す指標で、財務的な安定性を知るうえで使えます。
  • 両者を併用して比較・分析することで、企業の健全性や投資リスクをより包括的に判断できます。