
業経営において「利益が出ているのに倒産した」という事例は意外と多く、これは「黒字倒産」と呼ばれます。売上や利益が出ているからといって安心はできません。本記事では、黒字倒産の仕組みや原因、予防策について、図解を交えてわかりやすく解説します。
黒字倒産とは?
黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、実際の資金が不足して倒産に至る状態を指します。とくに掛取引が多い業種では、売上計上と現金回収のタイミングにズレが生じやすく、資金繰りの悪化につながります。
図解:帳簿の利益と現金のズレ
【帳簿上の利益】
売上 1,000万円(売掛)
↓
【実際の現金】
入金 3か月後 → 手元に現金なし
↓
【支払い】
仕入・人件費支払い → 現金不足
→ 黒字倒産リスク
黒字倒産の発生割合
東京商工リサーチの調査によると、2023年時点で倒産企業の約32%が黒字倒産でした。年々割合は減少しているものの、今なお3社に1社が「資金不足」によって倒産しているというのが現状です。
黒字倒産の主な原因
1. 資金繰りの甘さ
売上計上=現金増加ではありません。売掛金の入金が遅れると、支払いに必要な資金が不足する可能性があります。
2. 負債の返済負担
高額な借入金の返済が続くと、たとえ利益があっても返済に消えてしまい、手元資金が残りません。
3. 過剰な在庫
在庫は資産ですが、現金化されない限り資金にはなりません。在庫の過多は資金を圧迫します。
図解:在庫と資金の関係
仕入 → 商品が売れない → 在庫増加
↓
資金は減るが現金化されない
↓
黒字でもキャッシュ不足に
4. 掛取引依存
売掛比率が高い企業は、未回収リスクが高まり、資金ショートの危険性があります。
5. 減価償却費の錯覚
帳簿上は分割計上でも、実際には一括で現金が流出します。固定資産の購入後に資金が不足するケースも。
黒字倒産のリスクを見抜く方法
財務三表でチェックすべきポイント
- 損益計算書(P/L):利益の有無を確認
- 貸借対照表(B/S):自己資本比率や負債の割合を確認
- キャッシュフロー計算書(C/F):現金の流入出の実態を確認
自己資本比率の目安
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100
30%以下 → 資金繰り悪化のリスクあり
資金繰り表で未来を予測
キャッシュフロー計算書が「過去の実績」を示すのに対し、資金繰り表は「未来の資金状態」を予測します。1年分の入出金予定をもとに、赤字期間を可視化しましょう。
黒字倒産を防ぐ6つのポイント
① 財務状況を常に把握する
財務三表に加え、「株主資本等変動計算書」や「注記表」も確認し、リアルな経営状態をつかみましょう。
② 入出金のタイミングを明確に
毎月の支払・入金のタイミングを可視化し、資金不足が起きそうな月を事前に把握して対策を講じます。
③ 売掛金の早期回収
取引先には「早期支払で割引」などのインセンティブを用意し、回収期間の短縮を図りましょう。
④ 在庫を適正化する
需要に応じた仕入と発注管理を徹底し、在庫の回転率を高めます。
図解:在庫管理指標
交差比率 = 在庫回転率 × 粗利率
(高いほど利益効率がよい)
⑤ 金融機関と良好な関係を築く
資金が必要なときに備え、日頃から業績報告や返済履歴を通じて信頼関係を築いておきましょう。
⑥ キャッシュフロー経営を実践
帳簿上の利益に惑わされず、「現金の動き」を中心にした経営判断を行うことが、黒字倒産を防ぐ鍵です。
まとめ
黒字倒産は「利益があるから安心」と油断した企業が陥る落とし穴です。日々のキャッシュフローに目を配り、未来の資金繰りを可視化することが倒産回避の第一歩となります。
一見好調でも、資金の流れが見えなければ経営の足元はぐらつきます。利益と現金は別物。だからこそ「数字を読む力」と「現金を守る力」が、経営者には不可欠です。