■はじめに

「自社の申請書が通らなかったのに、なぜあの会社は採択されたのか?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?

補助金の採択・不採択には明確な傾向があります。
多くの成功事例を分析すると、採択された申請書にはいくつかの共通点があることがわかります。

今回は、実際の採択企業の事例をもとに、
“通る申請書”に共通する5つのポイントを解説します。


■共通点①:「課題の根拠」が明確に書かれている

採択された申請書の第一の特徴は、現状の課題に数字的な根拠があることです。
単に「生産性が低い」「売上が落ちている」と書くだけでは弱く、
「なぜ低いのか」「どのくらい改善できるのか」を示す必要があります。

💡採択例(製造業A社)

主要製品の加工に1個あたり平均45分を要しており、
競合他社(平均30分)に比べ15分の作業ロスが生じている。
新型プレス機を導入することで、作業時間を30分に短縮し、
月間生産数を1,200個→1,800個に増加させる。

🔎 Point
“課題”は感覚ではなく、データで語る
これが信頼される申請書の第一歩です。


■共通点②:「目的と効果」が一貫している

次に重要なのは、目的と効果のつながりが明確なこと。
補助金の目的(=国の政策)と自社の目的(=経営課題)が一致しているほど、採択率は高くなります。

💡採択例(食品メーカーB社)

調味液の充填作業を手作業で行っており、1日あたり1,000本が限界。
自動充填機を導入し、1日2,000本体制を確立することで、
人手不足を解消しつつ生産性を倍増させる。
→「省力化投資補助金」の趣旨(人手不足対策・生産性向上)に完全合致。

🔎 Point
「目的」と「効果」がずれていると不採択になりやすい。
制度の公募要領に書かれた目的文を必ず確認し、それに沿って記述しましょう。


■共通点③:「定量効果」が具体的である

採択企業の申請書は、効果を数値で表しているのが共通点です。
審査官が納得するのは、「どれくらい良くなるのか」が明確な申請書です。

💡採択例(建設業C社)

項目BeforeAfter改善率
工期10日7日▲30%
人員5名3名▲40%
粗利率22%28%+6pt

🔎 Point
“数字で語る”ことが、審査官への最大の説得材料。
効果は「生産性」「利益」「時間」「人員」「環境負荷」など、複数指標で示すとより効果的です。


■共通点④:「実施体制」が明確である

補助金の不採択理由で意外と多いのが、「実現性が低い」と判断されるケースです。
採択された企業は、実施体制とスケジュールを明確に書いています。

💡採択例(金属加工D社)

・代表取締役:全体統括・資金調達
・工場長:設備導入・現場教育
・経理担当:経費管理・報告書作成
導入スケジュール:2025年6月導入 → 7月稼働 → 8月報告完了

🔎 Point
“誰が・いつまでに・どのように”を明記すること。
「現実的に実行できる計画」として信頼性が高まります。


■共通点⑤:「補助金の使い道」が妥当

採択される企業は、補助金の対象経費を正しく理解していることも特徴です。
「対象外経費を含めている」「見積書と金額が違う」などのミスは即失格です。

💡採択例(サービス業E社)

ECサイト構築費用(Web制作・システム構築・広告出稿)を対象経費に計上。
公募要領で定められた“販路開拓経費”に該当し、見積書の内訳も明確。
審査で「費用の妥当性・効果の見込み」が高く評価された。

🔎 Point
補助金は「計画性」と「整合性」が命。
見積書・経費区分・スケジュールの整合を3点セットで確認しましょう。


■成功した企業に共通する「5つの要素」

要素内容成果
①課題の根拠データと数字で課題を説明信頼性UP
②目的と効果の一致国の政策目的と自社課題が一致採択率UP
③効果の定量化売上・生産性などを数値化説得力UP
④実施体制誰が何をいつ行うか明確実現性UP
⑤経費の妥当性対象経費・見積の整合書類審査通過率UP

■まとめ

補助金は「上手に書いた会社」が採択されるのではありません。
“論理的に説明できた会社”が採択されるのです。

そのためには、

  • 課題を数字で示す
  • 目的と効果を一貫させる
  • 実現可能な体制を整える

という3本柱を中心に、
整合性と根拠のある申請書を作ることが成功の近道です。