企業が安定して利益を上げ続けるには、限られたリソース(ヒト・モノ・カネ)をいかに効率よく活用するかが重要です。そこで注目されるのが「生産性分析」です。本記事では、生産性分析の基本的な考え方や指標、計算方法、活用のヒントまで、分かりやすく解説します。


生産性とは?

生産性とは、投入した経営資源に対して、どれだけ成果を上げられたかを示す指標です。

  • 労働生産性:従業員1人や1時間あたりの成果
  • 資本生産性:設備や投資額に対する成果
  • 全要素生産性(TFP):労働・資本・技術の総合的な効率性

つまり、同じ資源でより多くの付加価値を生み出せれば、生産性が高いといえます。


なぜ生産性が重要なのか?

近年、生産性向上が注目されている背景には、以下のような社会的要因があります。

  • 生産年齢人口の減少:日本の労働人口は1990年の約8,400万人をピークに減少し、2050年には約6,000万人と予測されています(※経済産業省)。
  • 働き方改革の推進:長時間労働の是正やワークライフバランスの向上が求められています。
  • 企業競争力の強化:限られた人材・資本で成果を最大化する必要があります。

これらの課題を乗り越えるには、業務の無駄を減らし、生産性を高めることが不可欠です。


生産性分析の主な指標

生産性分析では、以下のような指標を用いて、自社のパフォーマンスを数値で可視化します。

分類指標名計算式意味
物的生産性労働生産性生産量 ÷ 労働者数または労働時間従業員1人あたりの生産量
資本生産性生産量 ÷ 設備・資本投入額設備投資に対する生産成果
付加価値生産性労働生産性付加価値額 ÷ 労働者数または労働時間従業員が生み出す価値の効率
資本生産性付加価値額 ÷ 設備・資本投入額設備が生み出す価値の効率
全要素生産性TFP(全要素生産性)付加価値 ÷(労働投入 + 資本投入)

業種別:労働生産性の目安(2019年度)

中小企業庁のデータによると、業種別の1人あたり労働生産性(付加価値ベース)は以下の通りです。

業種労働生産性(万円/人)
宿泊・飲食業327
小売業548
卸売業951
運輸業663
製造業674
情報通信業851

(出典:中小企業白書2020年版)

これらの数値はあくまで平均的な目安ですが、自社の位置づけを知るうえで参考になります。


生産性分析の活用法

生産性分析の主な活用シーンは次のとおりです。

1. 現状把握と課題の発見

分析を通じて、どの資源が効率的か、どこに無駄があるかを数値で確認できます。

2. 設備投資の妥当性評価

設備投資が生産量や付加価値の増加に結びついているかを検証できます。

3. 他社比較によるベンチマーク

同業他社と指標を比較することで、自社の強みや改善点が明確になります。

4. 改善施策の立案

労働力の配置転換、業務の自動化、教育投資など、生産性向上に向けた施策に活かせます。


まとめ

生産性分析は、企業の経営効率を客観的に測るうえで欠かせない指標です。
人口減少や働き方改革が進む今こそ、生産性を重視した経営が求められています。

  • 労働や設備の効率を数値化して現状を把握
  • 指標をもとに課題を明確化し、改善策へつなげる
  • 自社の競争力強化や社員のやる気向上にも貢献

まずはシンプルな労働生産性の分析から始め、自社の経営改善に活かしてみてはいかがでしょうか。