
企業の財務の健全性を評価するうえで、重要な指標のひとつが「固定比率」です。これは、自己資本に対する固定資産の割合を示すもので、企業の長期的な安全性や支払い能力を測るのに役立ちます。
本記事では、固定比率の意味や計算方法、業界別平均、改善方法までをわかりやすく解説します。財務分析に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
固定比率とは?企業の長期安全性を測る指標
固定比率(Fixed Assets to Net Worth Ratio)とは、自己資本に対する固定資産の割合を示す指標です。以下の計算式で求められます。
固定比率(%)= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
この指標は、企業が所有する長期資産(建物、土地、設備など)を、返済不要の自己資本でどれだけ賄えているかを示します。
固定比率の理想値は「100%以下」
固定比率が100%を超える場合は、固定資産の一部を借入金などで賄っている状態です。これでは、将来の返済負担が企業の安定性に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、固定比率は「100%以下」がひとつの目安とされ、数値が低いほど安全性が高いと評価されます。
図解:固定比率の構造イメージ
[図] 固定比率のイメージ
┌──────────────┐
│ 自己資本 │ ← 分母
└──────────────┘
┌──────────────┐
│ 固定資産(建物等) │ ← 分子
└──────────────┘
固定比率= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
固定資産と自己資本とは?
- 固定資産:1年以上にわたって使用される資産で、有形・無形・投資その他の資産に分類されます。
- 有形:建物、機械、車両
- 無形:商標権、ソフトウェア
- 投資:長期保有の有価証券など
- 自己資本:資本金や利益剰余金など、返済不要の資金源。
- 資本金:株主からの出資
- 資本剰余金:資本取引から生じた剰余
- 利益剰余金:蓄積された利益
固定比率から読み取れる2つの視点
- どれだけの資金が固定資産に使われているか
自己資本が1,000万円で固定資産が800万円なら、固定比率は80%。固定資産を自己資本でまかなえている状態です。 - 企業の長期的な支払能力
自己資本の2倍以上を固定資産に投資している場合は、財務リスクが高いと判断されがちです。
業種別・規模別の平均値
業種によって固定資産の保有水準が異なるため、比較する際は同業他社と行うのが基本です。
業種 | 固定比率 | 固定長期適合率 |
---|---|---|
製造業 | 93.50% | 60.27% |
小売業 | 137.71% | 66.77% |
不動産業 | 210.19% | 82.89% |
宿泊・飲食サービス業 | 451.97% | 82.64% |
※出典:経済産業省「中小企業実態基本調査(2020年度)」
規模別にも違いがあります。小規模企業は借入に頼る傾向があるため、固定比率が高めになる傾向です。
資本金規模 | 製造業 | 非製造業 |
---|---|---|
1,000万円未満 | 174.2% | 309.3% |
1億円~10億円 | 89.2% | 108.5% |
固定比率が高い場合の改善策
① 不要な固定資産の見直し
使用していない機械・設備などがあれば、売却・除却を検討しましょう。ただし、将来的に必要となる可能性がある資産は慎重に判断が必要です。
② 自己資本の増強
- 増資によって資本金を増やす
- 配当金を抑えて内部留保を厚くする
- 経常利益を積み上げて利益剰余金を増やす
これらの取り組みにより、固定比率の分母が増え、数値が改善します。
固定比率とあわせて活用したい指標
指標名 | 概要 | 理想値の目安 |
---|---|---|
固定長期適合率 | 固定資産 ÷(自己資本+固定負債)×100 | 100%以下 |
自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資本 ×100 | 30%以上 |
流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 ×100 | 150%〜200% |
当座比率 | (流動資産 − 棚卸資産)÷ 流動負債 ×100 | 150%以上 |
まとめ:固定比率は100%以下が目標
固定比率は、企業が自己資本で固定資産をどれだけまかなえているかを示す重要な財務指標です。
- 基本は「100%以下」が目安
- 高い場合は固定資産の見直しや自己資本の増強を検討
- 他の指標(流動比率や自己資本比率)と合わせて総合的に判断
財務の安全性を保つためにも、固定比率は定期的に確認し、適切に管理していきましょう。