企業の収益力を示す重要な指標の一つに「売上総利益率(粗利率)」があります。この指標を活用することで、自社の商品やサービスがどれだけの付加価値を生み出しているか、価格戦略が適正かどうかを判断できます。

本記事では、売上総利益率の定義から計算方法、業界別の平均値、そして改善に向けたポイントまでを分かりやすく解説します。


売上総利益率とは?

売上総利益率とは、売上高に対して売上総利益(粗利)がどの程度の割合を占めるかを示す経営指標です。「粗利率」とも呼ばれます。商品やサービスにどれだけの付加価値を乗せられているかを測る目安となります。


図解:売上総利益率の構造

売上高 - 売上原価 = 売上総利益
売上総利益 ÷ 売上高 × 100 = 売上総利益率(%)
項目内容
売上高商品やサービスを販売して得た総収入
売上原価商品の仕入れや製造にかかった費用
売上総利益売上高から売上原価を差し引いた利益(粗利)
売上総利益率売上総利益が売上高に占める割合(収益性の目安)

他の経営指標との違い

売上総利益率は他の利益率と混同されがちですが、それぞれの指標は異なる視点から企業の収益力を示しています。

指標定義特徴・違い
営業利益率営業利益 ÷ 売上高 × 100本業の経費(販管費など)を差し引いた後の利益
経常利益率経常利益 ÷ 売上高 × 100営業外損益を含むトータルな利益水準
売上原価率売上原価 ÷ 売上高 × 100原価の比率であり、売上総利益率の裏返し

業界別の売上総利益率平均値

業種によって、適正とされる売上総利益率は大きく異なります。以下は、経済産業省の統計を基にした一企業あたりの平均値(2020年度)です。

業種売上総利益率(%)
製造業約19.2%
卸売業約12.4%
小売業約28.8%

売上総利益率が高ければ高いほど、商品やサービスの付加価値が高く、効率的に利益を得ていると言えます。


売上総利益率が高い場合と低い場合の意味

高い場合

  • 付加価値の高い商品・サービスを提供している
  • 仕入れや製造コストを効率的に抑えている
  • 利益率の高い商材が主力となっている

低い場合

  • 価格競争に巻き込まれて利益を確保しにくい
  • 原価が高く、売価に見合っていない
  • 利益率の低い商品が売れ筋になっている可能性

売上総利益率を上げるための3つのポイント

1. 商品・サービスの設計を見直す

付加価値の源泉は商品の魅力にあります。競合との差別化ポイントを明確にし、独自性や機能性、ストーリー性などを強化しましょう。

2. 売上原価の見直し

仕入先の選定見直しや、製造プロセスの改善によってコストダウンを図ることができます。外注費、光熱費、労務費の見直しも重要です。

3. 販売戦略の最適化

  • 利益率の高い商品の販売を強化する
  • セット販売や高単価商品の訴求を行う
  • プロモーション手法を変えて、顧客の価値認識を高める

実践例:売上総利益率改善の取り組み

例:ある小売業者のケース

項目BeforeAfter
主力商品汎用品自社開発商品
売上原価率75%60%
売上総利益率25%40%
主な取り組み内容商品見直し・原価削減・販売チャネル強化

高付加価値な商品の開発と原価見直しにより、利益率を15ポイント改善。


売上総利益率を定期的にチェックしよう

売上総利益率は、単年の指標ではなく、複数年にわたって推移を確認することが重要です。過去の推移や同業他社との比較を行うことで、自社の販売戦略や価格設定が適正かどうかの判断材料になります。


まとめ

売上総利益率は、企業の利益構造を理解するうえで非常に重要な指標です。ただ数値を見るだけでなく、なぜ高いのか・なぜ低いのかという背景を分析し、商品設計や販売戦略、原価構造の改善につなげることが大切です。

定期的なチェックと改善のサイクルを回すことで、収益力の向上と安定経営が実現できるでしょう。