
企業経営において、スピーディーかつ正確な意思決定は競争力を大きく左右します。その基盤となるのが「月次決算」です。本記事では、月次決算の基本から導入のメリット・デメリット、実施ステップ、チェックリストの活用方法までをわかりやすく解説します。
月次決算とは?
月次決算とは、月ごとに企業の経営状況を把握するために行う会計処理です。法的義務はありませんが、年次決算を補完する仕組みとして多くの企業で導入されています。業績や財務状態をタイムリーに可視化できるため、迅速な経営判断や資金繰り対策に役立ちます。
図解:決算の種類と目的
年次決算:1年に1回(法定) → 株主報告、税務申告
月次決算:毎月(任意) → 経営判断、資金繰り対策
月次決算を導入するメリット
- 年次決算の負担軽減
毎月処理を積み上げておけば、年次決算時にまとめて作業する必要がなくなり、業務負荷を軽減できます。 - 経営判断の迅速化
数字をリアルタイムで把握できるため、戦略修正やコスト削減の施策をタイムリーに実行できます。 - 融資や信用調査に有利
金融機関に対し透明性の高い資料を提示でき、資金調達において信頼度が増します。
月次決算のデメリットと対応策
デメリット | 対応策 |
---|---|
社内の混乱が発生 | スケジュールの徹底と部門間の連携強化 |
担当者の業務負担増 | 会計ソフトや自動化システムの導入で効率化 |
月次決算の3ステップ
STEP1:決算整理
- 現金・預金の確認(帳簿との整合性チェック)
- 棚卸資産の確定(在庫データの精査)
- 仮勘定・経過勘定の整理(未処理項目を正しい勘定へ)
- 減価償却や引当金の計上(月次配分処理を実施)
STEP2:試算表の作成
- 損益計算書(PL)
- 貸借対照表(BS)
- 資金繰り表
- 分析資料(前年同月比較や予実対比)
STEP3:報告と分析
経営層にレポートを提出。グラフや表を使うことで、数値を直感的に理解でき、次の施策に活かしやすくなります。
チェックリストの活用で抜け漏れ防止
複雑な業務を効率化するには、チェックリストが有効です。
チェック項目例(抜粋)
- 売掛金:未収確認、帳簿との一致
- 棚卸資産:実在性と評価方法の妥当性
- 経過勘定:前払・未払の妥当性確認
- 減価償却:月次按分の適正性
作成のコツ
- 専門用語を避け、誰でも理解できる表現にする
- 業務内容に応じて定期的に更新する
月次決算をスムーズに進める3つのポイント
- 必要書類の整理
請求書や領収書は月ごとにファイリング - 締め日とスケジュールの共有
部署間の事前準備を徹底し、スピードを向上 - 会計システムの導入
クラウド会計を利用すれば、自動集計やデータ共有が可能
【事例】製造業A社の導入例
関西に本社を置く製造業A社では、年次決算だけでは材料費や在庫の変動を把握しきれない課題がありました。月次決算導入後は、コスト高騰や在庫増加を早期に察知でき、生産計画を見直すことが可能に。その結果、利益率は前年同期比で8%改善しました。
月次決算を経営に活かす視点
- 資金繰りの最適化:キャッシュフローを月単位で把握
- 利益率の分析:部門別・製品別の収益性を確認
- 戦略立案:売上推移を基に販促や投資を計画
まとめ
月次決算は、年次決算を補完するだけでなく、日々の業務改善や経営戦略の見直しに直結する重要な仕組みです。チェックリストの活用やクラウド会計の導入で効率化を進めれば、業務負担を軽減しつつ精度の高い経営管理が実現できます。