
企業経営を安定させ、持続的な成長を実現するには「予算策定」が欠かせません。予算策定は、単なる数字の割り振りではなく、企業の目標を明確にし、実行のための土台を整える戦略的な活動です。本記事では、予算策定の基本から種類・プロセス・よくある課題・成功のコツまでわかりやすく解説します。
目次
- 予算策定とは
- なぜ予算策定が必要なのか
- 予算策定の2つの方式
- 予算策定の5ステップ
- 予算策定の適切な時期
- 成功に導く3つのポイント
- 予算策定で起こりがちな課題
- まとめ
1. 予算策定とは
予算策定とは、企業の年間経営目標から逆算し、「売上」や「経費」などの予算を設定することです。しばしば「予算管理」と混同されますが、以下の違いがあります。
予算策定と予算管理の違い
項目 | 内容 |
---|---|
予算策定 | 目標に基づき、事前に予算を計画・設定する |
予算管理 | 策定した予算をもとに実績をモニタリングし、調整する |
予算管理の出発点となるのが予算策定です。これがなければ、進捗を評価する指標も存在しません。
2. なぜ予算策定が必要なのか?
・経営目標の視覚化
予算策定により、「何を目指すか」が明確になります。部門間で共通認識が生まれ、迅速な意思決定が可能になります。
・経営の安定性が増す
事前に予算を定めておくことで、無駄な支出を抑えられ、キャッシュフローも安定します。
・改善施策が打てる
目標からズレが生じた場合でも、早期に対応策を講じることができます。計画と実績の差分を分析すれば、次の一手を見つけやすくなります。
3. 予算策定の2つの方式
トップダウン方式
経営陣が全体予算を設定し、現場へ指示を出す方式。小規模企業やスピード重視の組織に適しています。
メリット
- 意思決定が速い
- 経営方針との一貫性を保ちやすい
デメリット
- 現場の実情が反映されにくい
- 従業員の自律性が損なわれることも
ボトムアップ方式
現場からの提案を集約し、経営陣が調整する方式。大企業や多様な現場を抱える組織に有効です。
メリット
- 現場の声を活かせる
- 従業員のモチベーション向上
デメリット
- 意思統一に時間がかかる
- 調整に労力が必要
🔽 図:予算策定方式の比較
トップダウン式 ⇔ ボトムアップ式
経営陣主導型 現場主導型
意思決定が速い 現場の意見重視
4. 予算策定の5ステップ
予算策定は次のような流れで行われます。
① 経営計画から目標利益を設定
まず、経営方針に基づき、来期の利益目標を決定します。
② 部門ごとの予算を設定
各部署に必要な経費・売上目標を割り当てます。
③ 全体の予算を集計
部門別予算を統合し、全社予算を作成します。
④ 目標利益との整合性を確認
全体予算と利益目標が矛盾していないかを検証します。
⑤ 社内共有・実行
策定した予算は社内で共有し、実行体制を整えます。
5. 予算策定の時期
予算策定は、企業の規模や業種によって開始時期が異なります。
企業規模 | 開始時期(決算月基準) |
---|---|
大企業 | 半年前〜1カ月前 |
中小企業 | 約3カ月前 |
早めの準備が、精度の高い策定につながります。
6. 成功に導く3つのポイント
① 具体的な事業計画に基づく
事業目標や施策があいまいだと、予算にリアリティが出ません。数字に裏付けされた明確な戦略が不可欠です。
② 実現可能な目標設定
高すぎても低すぎても逆効果です。現実的かつ挑戦的なラインを見極めましょう。
③ 各部門との整合性を重視
各部門の予算が、企業全体の方針と整合しているかを必ず確認しましょう。
7. 予算策定でよくある課題と対処法
課題 | 対応策 |
---|---|
目標が高すぎる | 根拠あるデータをもとに見直す |
目標が低すぎる | 成長戦略とのバランスを調整 |
部門間に整合性がない | 定期的な会議・情報共有を実施 |
8. まとめ
予算策定は、企業の成長を支える「羅針盤」のような存在です。精度の高い予算策定を行うには、事前の準備、部門間の連携、目標の現実性が重要です。
🔽 図:予算策定の全体像
経営計画 → 目標利益設定 → 部門別予算 → 全体予算 → 共有・実行
また、予算策定は一度作って終わりではなく、定期的な見直しやPDCAの仕組みづくりが成功のカギとなります。今後の企業成長を見据え、戦略的な予算策定を行いましょう。
事例紹介(実例の差し替え)
たとえば、ある地方製造業A社は、従来トップダウン型で予算を設定していましたが、現場の声が届かないことが課題でした。そこでボトムアップ方式を導入。現場の改善提案が反映され、設備投資の効率化に成功。結果、翌年度のコスト削減率が15%を超えました。