
地震や台風といった自然災害、パンデミック、サイバー攻撃──こうした緊急事態がいつ起きてもおかしくない時代。企業がそれらのリスクに備えるために欠かせないのが「BCP(事業継続計画)」です。
本記事では、BCPの基本的な考え方から、策定のメリット、実際の進め方までを網羅的に解説します。担当者の方はもちろん、経営層や管理部門の方にも役立つ内容です。
1. BCPとは?
BCP(Business Continuity Plan)とは、企業が自然災害や事故などの非常事態に見舞われた際、どのように業務を継続・復旧するかを定めた計画のことです。目的は、事業活動の停止を最小限に抑え、迅速に回復させること。
想定されるリスク例:
- 地震、台風、水害
- 感染症の流行(例:新型コロナウイルス)
- システム障害、サイバー攻撃
- 社内不祥事、テロ、重大事故
2. BCPとBCMの違い
BCM(Business Continuity Management)は、BCPを策定・運用するためのマネジメント体制全体を指します。BCPが「計画書」であるのに対し、BCMは「その計画を作り、育て、見直す仕組み」と言えます。
BCMの主な構成:
- リスク分析・影響評価
- BCPの策定
- 訓練や教育
- 定期的な見直しと改善
3. 防災計画との違い
防災計画が「被害を未然に防ぐこと」を目的にしているのに対し、BCPは「被害が発生した後の対処」に重きを置いています。両者は補完関係にあり、BCPがあっても防災計画の整備は必要です。
4. 国内のBCP導入状況
帝国データバンクの調査(2021年)によると、BCPを策定している企業は全体の17.6%。大企業では約32%が策定済みですが、中小企業では14.7%にとどまっています。
課題として多い声:
- 専門知識がない
- 担当者が不足している
- 計画策定の優先順位が低い
5. BCP策定が必要な背景
自然災害の頻発
日本は世界有数の自然災害多発国。例えば、2018年の西日本豪雨では多数の企業が長期間にわたって事業を停止せざるを得ませんでした。
社会環境の変化
新型感染症の拡大は、業務のリモート化や分散化など、従来とは異なる事業継続の視点を企業に突きつけました。今後も、未知のリスクが登場する可能性があるため、柔軟な対応力が必要です。
6. BCP策定のメリット
- 緊急時の迅速な対応
手順が明確になることで、混乱を防ぎ、被害を最小限に抑えられます。 - 顧客・取引先の信頼維持
復旧の遅れは顧客離れに直結します。事業再開の早さが信頼を左右します。 - 企業の信用力向上
BCPを策定している企業は、社会的責任を果たしていると評価されることもあります。 - 業務の見直し機会
策定過程で業務内容を整理するため、業務改善や効率化にもつながります。
7. BCP策定時のポイント
- 政府資料を活用する
中小企業庁や内閣府のガイドラインは、実務に即した内容で構成されており、テンプレートや記入例も掲載されています。 - 自社の実情に合わせる
業種・業態により必要なリスク対策は異なります。机上の空論ではなく、実行可能な計画が大切です。 - できる範囲から始める
一気に完璧なBCPを作るのは困難です。まずは中核業務に限定し、段階的に充実させていきましょう。
8. BCP策定の手順
- 基本方針の策定
BCPの目的や対象リスクを明確にし、経営方針とすり合わせます。 - 社内体制の整備
プロジェクトチームを編成し、総務や情報システム部門など関係部門を巻き込みます。 - 業務の優先順位付け
どの事業を優先的に復旧させるべきかを整理します。 - 対策案の策定
各業務に対して、代替手段や復旧までの時間をシミュレーションします。 - 発動基準と体制の構築
どのタイミングで誰がどう動くかを事前に定めておきます。 - 社内への共有と訓練
BCPは策定だけでなく、社員の理解と訓練が必要不可欠です。 - 定期的な更新
状況変化に応じて見直しを行い、常に実効性の高い状態を保ちます。
9. まとめ
BCPは、単なる「もしもの備え」ではなく、企業の持続的成長を支える基盤です。近年では、オフィス環境やITインフラの整備とも密接に関係しており、働き方改革の一環として注目されています。
例えば、あるIT企業では、BCPの一環としてテレワーク環境を整備。実際に地震による交通網の麻痺時も業務を継続できたことが、高く評価されています。
BCPの策定を機に、業務体制の見直しやオフィス環境の改善を図ってみてはいかがでしょうか。