
市場で成功を収めるには、「どこで戦うか」という視点が不可欠です。製品やサービスが優れていても、市場での立ち位置が曖昧であれば、顧客の選択肢として埋もれてしまいます。そんなときに活用したいのが「ポジショニングマップ」。
この記事では、ポジショニングマップの基礎から作成手順、注意点、そして戦略的な活用方法までを詳しく解説します。
ポジショニングマップとは?
ポジショニングマップとは、市場における自社および競合の立ち位置を視覚化するツールです。
2つの異なる評価軸(例:価格×品質)を縦軸と横軸にとり、各ブランドやサービスをマップ上に配置することで、競争状況や市場の「空白地帯」が一目でわかります。
✅ ポジショニングマップの活用メリット
活用目的 | 説明 |
---|---|
市場の構造把握 | 自社・競合の分布を視覚的に理解できる |
差別化戦略 | 他社と異なる位置を見出し、独自性を訴求できる |
空白地帯の発見 | 競合のいない領域=新たなビジネスチャンス |
新商品開発 | どのポジションを狙うべきかが明確になる |
ポジショニングマップの作成ステップ
以下の4つのステップを踏むことで、効果的なポジショニングマップを作成できます。
① 自社・競合のサービスをピックアップ
まずは、自社と競合の製品やサービスを洗い出します。特に重要なのは以下の観点で情報を整理すること:
- 対象となる顧客層
- 主な提供価値(価格、機能、ブランドイメージなど)
- 強み・弱み
この工程で情報をしっかり集めることで、マップ作成後の分析が深まります。
② KBF(Key Buying Factor)を抽出
KBF=顧客が購入時に重視する要素のこと。マーケティングではこの「選ばれる理由」の把握が極めて重要です。
🔍 主なKBFの例:
- 価格(高価格/低価格)
- 性能(高性能/耐久性)
- デザイン(シンプル/スタイリッシュ)
- 口コミ・評判
- 保証やアフターサービス
- 店舗対応・接客品質
- 立地や利便性
💡 KBFの調査方法
- 顧客アンケート
- インタビュー
- SNSやレビューサイトの分析
KBFは「性能系」「価値系」「利用シーン系」に大別されます。自社の業種やターゲットに応じて、どのカテゴリが重視されるかを考えましょう。
③ 軸となる2つの要素を選定
抽出したKBFの中から、ポジショニングマップに使う2軸を選びます。
▶️ 軸選びのポイント
視点 | 説明 |
---|---|
顧客視点 | 実際に選択の判断材料となっているか |
自社視点 | 自社の強みが活かせるか |
分析視点 | 2軸が相互に独立しているか(関連性が低いか) |
📌 例:
「価格」と「品質」は相関性が高いため、軸としては不適切。代わりに、「価格」と「サポート体制」など、異なる価値軸の組み合わせが有効です。
④ マップを作成・分析
選定した2軸を使って、マップを作成しましょう。ExcelやPowerPointでも簡単に作れます。
↑ 高価格
|
| A社(高価格・高機能)
|
| B社
| 空白地帯
|
|__________→ 低機能
|
C社(低価格・低機能)
この図のように配置することで:
- 自社の相対的な立ち位置
- 競合との差別化ポイント
- 市場の空白地帯
がひと目で分かります。
ポジショニングマップ作成時の注意点
ポジショニングマップは便利なツールですが、以下の2点には特に注意が必要です。
✴️ 1. 関連性の高い要素を軸にしない
前述のように、相関性の高い要素(例:「価格」と「コスパ」)は、マップの情報量を減らし、意味のある分析ができません。
❌ NGな軸の組み合わせ
- 価格 × 品質(比例関係)
- スピード × 対応の速さ(同義語に近い)
✴️ 2. 空白地帯に注目する
マップの分析では、自社の強みや競合との差別化だけでなく、「誰もいないポジション=空白地帯」に注目することも大切です。
この空白地帯こそが、競争の少ない新市場の可能性を秘めています。
ただし、「なぜ空白なのか」を分析することも忘れずに。需要がない、コストに見合わないといった理由も考慮し、慎重に戦略を立てましょう。
作成に使えるツール
- Excel/PowerPoint:基本的なマップ作成に最適
- CanvaやNotion:ビジュアルにこだわる場合に便利
- BIツール(Tableau/Google Data Studioなど):高度な分析やチーム共有が可能
まとめ|ポジショニングマップは戦略の羅針盤
ポジショニングマップは、自社の立ち位置を視覚化し、マーケティング戦略に方向性を与える強力なツールです。
✔ 顧客のKBFを理解し
✔ 適切な軸を選定し
✔ 客観的に市場全体を把握することで
競争優位性のあるポジションを見つけ出すことができます。
特に、「空白地帯」の発見と、「顧客ニーズ×自社の強み」の交差点を見つけることが、市場での成功を左右します。