ファイブフォース分析は、企業が業界の競争環境を把握し、戦略を立てるための有力なツールです。
この分析手法は、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが1980年に提唱したもので、業界内の競争を形作る5つの要素(競争要因)を評価します。
企業はこれを通じて、業界構造を理解し、競争優位性を強化する方法を見つけ出すことができます。

ファイブフォース分析の5つの競争要因

  1. 業界内の競合との競争
    業界内の競争が激しい場合、企業は利益を上げるのが難しくなります。特に競合が多く、成長が鈍化している場合や、固定費が高い業界では、価格競争に陥りやすいです。
    また、企業間の合併や買収(M&A)も競争環境に大きな影響を与える要因です。
  2. 新規参入の脅威
    新規参入の脅威は、業界の競争状況を大きく変える可能性があります。参入障壁が低い業界では、新しい企業の参入が増えることで競争が激化し、収益性が低下します。
    例えば、高い技術や設備投資が求められる業界では新規参入が難しくなりますが、技術革新が進む分野では参入障壁が下がることもあります。
  3. 代替品の脅威
    代替品が登場すると、既存の製品やサービスが脅かされることがあります。例えば、スマートフォンの登場がデジタルカメラや携帯音楽プレーヤーの市場に影響を与えました。
    代替品は価格や性能面で優れている場合や、新たな技術によって既存製品を代替できる場合に脅威となります。
  4. 売り手(サプライヤー)の交渉力
    サプライヤーの交渉力が強いと、企業にとっては仕入れ価格が上昇し、利益率が圧迫されることがあります。サプライヤーが少数で、提供する製品が企業にとって不可欠な場合、その交渉力は非常に強くなります。特に、特定の部品や原材料が限られた企業に依存する業界では、この交渉力が重要な要素となります。
  5. 買い手(ユーザー)の交渉力
    買い手(ユーザー)の交渉力が強い場合、企業は価格競争に巻き込まれることがあります。買い手が多くの選択肢を持ち、価格や品質に敏感な場合、企業の利益が圧迫されやすくなります。製品の差別化が難しい場合、買い手の交渉力が強くなる傾向があります。

ファイブフォース分析の実施手順

ファイブフォース分析を行う際には、以下の4つのステップを踏んで進めます。

  1. 業界の定義
    最初に分析する業界の範囲を適切に定めます。範囲が広すぎると分析が浅くなり、狭すぎると競争要因が十分に洗い出せません。
  2. 情報収集
    自社や競合の情報を収集し、業界動向を理解します。業界団体や公開情報、専門家からのインタビューを通じて情報を集めます。
  3. 情報評価
    集めた情報をもとに、5つの競争要因を「高」「中」「低」と評価し、どの要因が業界において強い影響を持つのかを明確にします。視覚的に整理するために、レーダーチャートなどを活用すると効果的です。
  4. 戦略策定
    分析結果を基に、業界内での競争優位性を確立するための戦略を立てます。これには、業界の構造を変える戦略やコストリーダーシップを強化する戦略などが含まれます。

ファイブフォース分析の実際の活用事例

成功事例:スターバックス

スターバックスは、コーヒー業界の競争が激しい中で、ブランド力と顧客ロイヤルティを活かして競争優位性を確立しました。同社は、ただコーヒーを提供するだけでなく、多彩なメニューや季節ごとの限定商品を通じて差別化を図り、競争相手との差別化に成功しています。

失敗事例:ブロックバスター

かつてビデオレンタル業界で圧倒的なシェアを誇ったブロックバスターは、代替品(インターネット配信サービス)や新規参入(Netflixなど)の脅威に適切に対処できず、競争に敗れました。同社は市場の変化に柔軟に対応できず、結果として倒産に至りました。

ファイブフォース分析の重要なポイント

  • 「3つの力」を重視する:特に新規参入の脅威、業界内の競合との競争、代替品の脅威の3つは売上に直接影響するため、最も重要な要素とされます。
  • 適切な分析範囲の設定:分析対象の範囲が広すぎると分析が不十分になり、狭すぎると競争要因を見落としてしまいます。適切な範囲を定めることが重要です。
  • 複数担当者で実施する:客観的な分析を行うために、複数の担当者が協力して進めることが推奨されます。

他の分析手法との違い

ファイブフォース分析は、業界内の競争環境を評価するのに特化したフレームワークです。他の分析手法と比較すると、以下の点が特徴的です。

  • PEST分析は、政治・経済・社会・技術のマクロ環境を評価しますが、ファイブフォース分析は業界内の競争要因に焦点を当てています。
  • SWOT分析は、企業の強み・弱み、機会・脅威を分析しますが、ファイブフォース分析は業界全体の競争力を分析します。

結論

ファイブフォース分析は、業界内の競争要因を把握し、競争優位性を強化するために非常に有用なツールです。
この分析を通じて、企業は市場の競争環境を理解し、適切な戦略を立てることができます。
業界の競争要因を正確に捉えた戦略的意思決定は、企業の成長と持続的な競争力の強化に貢献するでしょう。