■ はじめに:経営改善の最優先は「粗利改善」

405事業でも早期経営改善計画でも、
最初のステップは必ず 粗利改善 です。

なぜなら――

✔ 売上があっても粗利がなければ会社は死ぬ

✔ 資金繰りは粗利が増えない限り改善しない

✔ 売上より粗利の方が再建スピードが速い

✔ 銀行は「粗利構造」を最重要ポイントとして見ている

つまり、
粗利改善は“再建のエンジン” なのです。


■ 粗利改善は「4つの切り口」で考える

粗利改善は、次の4つに分類されます。


① 売価改善(価格戦略)

② 原価改善(内製化・外注見直し・歩留まり)

③ 業務改善(ムダ削減・工数短縮)

④ 商品・顧客ポートフォリオ改善(高粗利へシフト)


どれか1つではなく、
複数の組み合わせで効果を最大化します。


■ ① 売価改善(値上げ・価格の見直し)


成功しやすい価格改善のパターン

  • 低採算顧客の値上げ
  • 低粗利品の値上げ
  • 小口・特急・スポット案件の“追加料金”導入
  • 単価表の見直し
  • 原価上昇分の転嫁

例:製造業でよくある改善

  • “特急対応+20%”
  • “小ロット+加工費加算”
  • “難易度別の単価体系” を導入

コツ

  • 値上げではなく「条件変更」と伝える
  • 理由を客観的に説明する(人件費・原材料費上昇)
  • 低採算顧客から優先する
  • 粗利が高い顧客を優遇し、集中させる

■ ② 原価改善(外注見直し・内製化・歩留まりUP)


製造業はここが最も効果が大きい

  • 外注加工費の適正化
  • 内製化設備の導入(補助金活用)
  • 歩留まり改善
  • 加工順序の見直し
  • 材料ロス削減
  • 加工ミスの削減(標準化)

  • 溶接加工の内製化で外注費30%削減
  • 仕入れ先を2社化して仕入単価5〜10%改善
  • 図面ミス削減で手戻り10%減

■ ③ 業務改善(効率化)


現場で最も抜け漏れるポイント

  • 工程間の待ち時間
  • 段取り時間の長さ
  • 材料移動のムダ
  • 二度手間の書類処理
  • 作業標準がなく人によって差が出る

改善例

  • 動線改善で移動時間30%削減
  • 同じ作業の連続化(段取り回数を減らす)
  • 作業標準書の導入
  • チェックリストでミスを減らす

効率化は「少人数でこなせる仕事量を増やす」ため、
粗利改善に直結します。


■ ④ 商品・顧客ポートフォリオ改善


不採算顧客から撤退する勇気が利益を生む

  • 低粗利顧客を縮小
  • 高粗利顧客へリソース集中
  • 粗利率の低い商品を縮小・廃止
  • 代替商品の提案
  • 付加価値商品の育成

実務で最も成功率が高い手法

“高粗利 × 優良顧客” へリソース集中

粗利が低い顧客に時間を使う企業ほど、
再建は長期化します。


■ 粗利改善の成功事例(現場でよくあるパターン)


事例①:製造業

  • 外注加工費を内製化(溶接機導入)
  • 単価表を見直し
  • 小ロット特急料金を導入
    → 粗利率 18% → 30%へ改善

事例②:食品製造

  • 仕入れ単価の再交渉
  • 歩留まり改善(ロス削減)
    → 粗利額が月50万円改善

事例③:建設業

  • 現場ごとの利益管理
  • 職人配置の標準化
    → 工期短縮・粗利改善

事例④:卸売業

  • 低採算顧客の縮小
  • 高粗利商品へのシフト
    → 営業利益が2倍に

■ 粗利改善をやる前に必ずやるべき「見える化」


① 商品別粗利

② 顧客別粗利

③ 工程別原価

④ 外注費の内訳

⑤ 人件費/工数

⑥ 在庫回転・棚卸ロス

この“粗利マップ”がない企業は改善が進みません。


■ 粗利改善の実務フロー(中小企業向け)


1️⃣ 現状の粗利分析を作成
2️⃣ 高粗利/低粗利の仕分け
3️⃣ 不採算の原因分析(価格?工程?外注?)
4️⃣ 改善アイデア出し
5️⃣ 効果×実現性で優先順位づけ
6️⃣ 30日以内に実行
7️⃣ モニタリングで継続改善


■ 粗利改善が進む企業の特徴

✔ 価格交渉を恐れない

✔ 現場の声を改善に反映

✔ 月次で数字を見て行動

✔ 少数の施策を確実に実施

✔ 優良顧客へ集中


■ 粗利改善が進まない企業の特徴

❌ 単価表が古い

❌ 顧客別粗利が見えていない

❌ 現場任せで標準化がない

❌ 外注費を“言い値”で払っている

❌ 不採算顧客を切れない


■ 粗利改善は「経営改善の心臓部」

経営改善が成功する企業と失敗する企業の差は
粗利構造をどれだけ“早く”“深く”“継続して”見直せるか
にあります。

  • 粗利改善なしの売上拡大は“赤字拡大”
  • 粗利改善なしの効率化は“焼け石に水”
  • 粗利改善なしの資金繰り改善は“一時的”

💬 粗利が改善すれば、すべてが改善する。