
■ はじめに:再建はゴールではなく、スタート
経営改善計画を策定し、
- 資金繰りが安定
- 返済負担が最適化
- 粗利改善が進む
という状態になったとしても、
それは 「経営がようやくゼロ地点に戻った」 にすぎません。
本当に大切なのは、
再建後にどう成長軌道に乗せるか。
経営改善計画の次のステージでは、
守りから攻めへの転換が必要になります。
■ 再建後の成長戦略は「3つの柱」で考える
多くの企業が成長フェーズで迷走する理由は、
“何から手をつければいいか分からない” からです。
そこで、支援の現場では
次の 3つの柱 で整理します。
① <収益の強化> 主力事業の磨き込み
再建後は、まず「粗利が取れる主力」に集中します。
具体的には:
- 高粗利商品へのシフト
- 低採算分野の縮小
- 提供価値(USP)の再定義
- 顧客セグメントの見直し
- リピート向上策の導入
主力事業の収益性が高まることで、
再建後の“安定基盤”が強固になります。
② <仕組み化> 再発しない経営リスクの除去
再建前に赤字を生んでいた原因は
多くの場合“仕組みの欠陥”にあります。
再建後は、次の点を必ず整備します。
仕組み化のポイント:
- 月次決算・資金繰り表のルーチン化
- 粗利管理の仕組み
- 営業KPI管理システム
- 組織・権限・業務フローの再設計
- 外注比率/在庫管理の適正化
これを整備することで、
「同じ問題が繰り返される」 ことを防げます。
③ <新規創出> 新しい売上の柱をつくる
再建後の3~5年で必要なのが、
“第2・第3の売上の柱”づくりです。
■ 成長戦略の王道パターン(実務で最も成功する順)
🔵 1.既存顧客向けのクロスセル
・関連商品の販売
・上位サービス(アップセル)
・保守・契約サービスの導入
→ 最も費用対効果が高い
🔵 2.既存商圏・既存分野での拡大
・営業チャネルの強化
・SNS・サイト改善
・強みの訴求ポイント改善
🔵 3.新市場・新顧客の取り込み
・法人 → 個人向け
・地域の拡大
・代理店販売/パートナー連携
🔵 4.新規事業・新たな収益モデル
・サブスクモデル
・OEM/ODM
・デジタルサービス
・新分野進出(補助金の活用)
再建後すぐに新規事業に走るのは危険。
王道は “既存 × 既存” の改善から始めることです。
■ 成長戦略は「ビジネスモデル俯瞰図」を元に再設計する
再建時に作成した俯瞰図をもとに、
- どの顧客を伸ばすか
- どの商品を削るか
- どのプロセスを改善するか
- 新たな価値は何か
を再び“俯瞰”して整理します。
改善計画 → 再建 → 成長戦略
の全ての中心にあるのが「俯瞰図」です。
■ 成長フェーズでの“資金計画”が最重要
攻めの経営には必ず資金が必要です。
そのため、次の点を明確にします。
✔ 初期投資はいくら必要か
✔ 補助金で活用できる制度は何か
✔ 銀行はどのタイミングで協力してくれるか
✔ いつ資金が不足するか
✔ 投資後の回収シミュレーション
特に、
「経営改善計画 → 補助金 → 融資 → 成長投資」
の流れは非常に合理的で成果も出やすいです。
■ 成長戦略を成功させる“7つの鉄則”
① 主力事業の粗利改善が最優先
成長の基礎体力は「粗利率」です。
② 仕組み化で“経営の再悪化”を防ぐ
月次管理とKPI設計は絶対に外せない。
③ いきなり新規事業に走らない
成功率は大幅に低下します。
④ 投資前に必ず資金繰りをシミュレーション
成長期ほどキャッシュが減るから要注意。
⑤ 補助金を活用して投資負担を最小化
成長速度を2倍にできる。
⑥ 金融機関と良好な関係を維持
報告・共有ができる企業は追加融資を受けやすい。
⑦ 3年後・5年後の「売上の柱」を複数つくる
再建後の失敗は“単一依存”が原因。
■ 再建から成長へ進んだ企業の実例(要点)
実務では次のような成功パターンが多いです。
- 405事業で返済負担軽減
- 粗利分析で不採算事業を見直し
- 主力商品に集中し粗利率UP
- 新サービスで売上の柱を増やす
- 銀行から追加融資で投資加速
- 2年後には黒字転換・自己資本比率改善
「改善」→「成長」のルートに乗ると
経営は一気に安定し始めます。
■ まとめ:再建の次は“成長設計”へ
経営改善計画はゴールではありません。
**“経営を立て直し、未来の成長をつくる土台”**です。
- 主力事業の強化
- 仕組み化による安定化
- 新たな売上源の創出
- 補助金・融資を使った戦略投資
これらを組み合わせることで、
企業は再建後、持続的な成長軌道に入ります。
💬 再建は「守り」
成長は「攻め」
その両方をつないでこそ、経営は安定します。


