■ はじめに

食品メーカーが設備投資を行う際、
「銀行融資」「補助金」「405事業(経営改善計画)」
これら3つの制度をどう使い分けるかが非常に重要です。

しかし実務の現場では、

  • 何をどう使えばいいのかわからない
  • 自社はどれが使えるのか判断できない
  • 組み合わせ方がわからず機会損失している

というケースがほとんどです。

本記事では、食品メーカーが知っておくべき
3つの資金調達ルートの違いと、
それぞれの使いどころをわかりやすく整理します。


■ 1. 銀行融資:設備投資の“メイン資金”

銀行融資は、食品メーカーの設備投資において
最も中心になる資金調達手段です。

設備資金(長期融資)は、
食品設備の特徴である「高額・長寿命」と非常に相性が良く、

  • 冷凍・冷蔵設備
  • 包装、計量機械
  • 盛付ライン、充填機
  • ボイラー、蒸気設備
  • 衛生管理設備(HACCP対応)

などの投資に広く使われます。

◎ 銀行融資の強み

  • 多額の投資でもカバーできる
  • 融資実行が早い(最短数週間)
  • 設備導入のタイミングに柔軟
  • 補助金と並行して動かせる

◎ 銀行融資の弱み

  • 審査がある
  • 毎月返済が必要
  • 計画書が弱いと否決される

特に食品メーカーの場合、
計画の作り込みが融資成否を左右します。


■ 2. 補助金:自己資金を減らす“負担軽減策”

補助金は設備投資額の1/2〜2/3を国が負担してくれる制度です。

食品メーカーが使いやすい補助金は次のとおり。

● 経産省

  • 省力化投資補助金
    → 自動化・省人化・生産性向上

● 農水省

  • 産地連携緊急対策事業
    → 原料調達+加工ライン更新
  • HACCPハード事業
    → 衛生管理設備・品質管理
  • 強い農業づくり交付金
    → 加工・流通設備の包括的支援

◎ 補助金の強み

  • 設備投資の負担を大幅に軽減
  • 自動化・省人化が実現しやすい
  • 設備更新の優先度を上げるきっかけになる

◎ 補助金の弱み

  • 採択率がある
  • 設備導入後の「実績報告」が必要
  • 入金が遅い(半年〜1年後)
  • つなぎ資金が必要

補助金は非常に有効ですが、
補助金だけでは設備は買えない
というのがポイントです。

ここで必ずセットになるのが「つなぎ融資」です。


■ 3. 405事業(経営改善計画):金融との“信頼基盤”

多くの食品メーカーが誤解していますが、
405事業は「経営悪化企業のための制度」ではありません。

むしろ、
銀行融資を通しやすくする制度
と考えるのが正解です。

◎ 405事業で得られる価値

  • 銀行との協調関係が強化される
  • 事業計画の信頼性が上がる
  • 設備投資の根拠が明確になる
  • 返済可能性(キャッシュフロー)が可視化される
  • 補助金申請と同時進行しやすい

食品メーカーでは、
「補助金 → 405事業 → 銀行融資」
という組合わせが最もスムーズに通ります。


■ 4. 3つの制度の違いを整理すると?

◎ 比較表

項目銀行融資補助金405事業
目的設備資金を借りる投資負担を減らす事業計画の信頼性向上
実行スピード早い遅い(半年〜1年)中程度
必要書類計画書・決算書計画書・見積・実績報告事業改善計画
強み金額が大きい自己資金を減らせる銀行評価UP
弱み返済が必要採択率・報告が必要作成の手間
食品業界との相性

3つは役割が全く違うため、
どれか1つだけでは成り立ちません。


■ 5. 使い分けの結論

食品メーカーの設備投資は、
次の順番で進めると最も成功します。

① 設備更新計画(必要性・収益性)を明確化  
② 補助金の対象制度を選定  
③ 405事業で事業計画を固める  
④ 銀行融資(つなぎ+長期)を実行  
⑤ 投資効果を測定し再投資

この一連の流れをつくれば、

  • 設備更新が計画的にできる
  • 自己資金負担が減る
  • 銀行の協力度が上がる
  • 生産性が伸びる
  • 再投資が可能になる

という「強い食品メーカー」へと変わります。


■ 図解:3つの制度の役割と連携イメージ

【補助金】負担軽減
       │
       ▼
【つなぎ融資】設備導入のための資金
       │
       ▼
【長期融資】返済を平準化
       │
       ▼
【405事業】計画の信頼性UP・金融と協調

■ まとめ

食品メーカーの設備投資は、
銀行融資・補助金・405事業を組み合わせることが必須です。

これを理解して動ける企業は、
物価高・人手不足・老朽化の三重苦の中でも
“投資を続けられる企業”として成長していきます。