
■はじめに
補助金の採択率を左右する最大のポイントは、「申請書の中身」です。
多くの経営者が「文章に自信がない」と悩みますが、
実は、上手な文章よりも**“構成と順序”**が大切です。
審査官は、1件あたり数十分で何十社もの申請書をチェックします。
その中で、「伝わりやすい・筋の通った」計画書が採択されるのです。
今回は、審査官の目線で見た採択される申請書の構成と書き方のコツを紹介します。
■補助金申請書の基本構成(5章構成)
申請書は、下記の5章構成で整理すると、どの補助金にも対応できます。
| 章立て | 内容 | ポイント | 
|---|---|---|
| ① 会社概要 | 事業の基礎情報・沿革・強み | 「どんな会社か」を簡潔に伝える | 
| ② 現状分析と課題 | 業界動向・経営課題 | 数値とデータで“課題の根拠”を示す | 
| ③ 取組内容(事業計画) | 投資や活動の具体内容 | 何を・どう行うかを明確にする | 
| ④ 期待効果 | 売上・利益・生産性などの成果 | 数値で効果を表現する | 
| ⑤ 実施体制とスケジュール | 実行メンバー・工程表 | 実現可能性を示す | 
この流れを守るだけで、審査官に「読みやすい計画書」と印象づけられます。
■① 会社概要 ― “信頼できる企業”であることを伝える
最初に書くのは、会社の基本情報と特徴です。
審査官はまず「この会社がどんな企業か」を知りたがります。
💡記載例
- 会社の設立年・所在地・従業員数
 - 主な事業内容・取引先・売上規模
 - 自社の強み(技術力、地域密着、顧客満足度など)
 
🔎 Point
文章よりも簡潔な箇条書き・表形式が効果的です。
読み手が一目で理解できるレイアウトを意識しましょう。
■② 現状分析と課題 ― “なぜ必要なのか”を明確に
補助金の本質は、「課題解決のための支援」です。
よって、現状の問題点とその原因を具体的に書くことが採択の第一歩。
💬悪い例
「売上が減少しているため、設備を更新したい。」
💡良い例
「主要取引先から短納期案件が増え、既存設備では対応が困難。
結果として受注機会を逃し、売上が3年間で10%減少。
新設備導入により生産速度を30%改善し、受注機会を取り戻す。」
🔎 Point
現状を「データ+課題」でセットに書くことで、
「だから補助金が必要」という説得力が生まれます。
■③ 取組内容 ― “何をどう実行するのか”を具体的に
次に、補助金を使って実施する内容を明確にします。
ここが申請書の**中心部分(審査の要)**です。
💡記載すべきポイント
- 導入・開発する設備・システムの内容
 - 具体的な実施ステップ(いつ・誰が・どう行うか)
 - 投資金額と内訳(見積書と一致させる)
 
💬例文
「2025年6月に新型自動溶接機を導入し、既存ラインの半自動化を実施。
導入後は製造時間を従来比40%短縮し、年間受注数を20%増加させる。」
🔎 Point
「目的に沿った投資」であることを明示し、
専門用語を避け、誰が読んでも理解できる表現にしましょう。
■④ 期待効果 ― “補助金を使う価値”を数字で示す
審査官は「補助金を出す意味があるか」を見ています。
そのため、効果を数値化することが不可欠です。
💡書き方のコツ
| 項目 | Before | After | 改善率 | 
|---|---|---|---|
| 生産時間 | 100分 | 70分 | ▲30% | 
| 生産量 | 100個/月 | 130個/月 | +30% | 
| 売上 | 1,000万円 | 1,300万円 | +30% | 
| 粗利率 | 25% | 30% | +5pt | 
💬例文
「新設備導入により、1人あたりの生産性を30%向上させる。
これにより粗利率を25%→30%へ改善し、年間利益200万円増加を見込む。」
🔎 Point
数字の根拠は過去の実績・社内データから算出すると信頼度が上がります。
■⑤ 実施体制とスケジュール ― “実現できる計画”を示す
最後に、事業を誰が、どのように進めるのかを記載します。
審査官に「実行力がある」と印象づける重要な章です。
💡記載例
| 役割 | 担当者 | 内容 | 
|---|---|---|
| 事業統括 | 代表取締役 | 全体進行と金融機関調整 | 
| 技術責任者 | 工場長 | 設備導入と現場教育 | 
| 経理担当 | 総務課長 | 経費管理・報告書作成 | 
さらに、スケジュールを時系列で明示します。
📅工程例
- 2025年5月:補助金採択・交付決定
 - 2025年6月:設備契約・設置準備
 - 2025年8月:稼働開始・効果検証
 - 2026年1月:実績報告・入金
 
🔎 Point
「人」と「時期」を明記することで、信頼性と実現性が高まります。
■まとめ
採択される申請書は、上手い文章ではなく整理された構成で作られています。
- ①会社概要:信頼感を与える
 - ②現状と課題:補助金の必要性を示す
 - ③取組内容:投資の妥当性を説明
 - ④期待効果:成果を数値で可視化
 - ⑤体制とスケジュール:実現性を裏付け
 
この5章構成を守ることで、どの補助金にも通用する「強い申請書」が完成します。

