
はじめに
中小建設業の多くが抱える課題――それは「ベテランがいないと現場が回らない」という属人化です。
経験と勘に頼った経営は、職人の退職・欠勤・異動によって簡単に崩れてしまいます。
本記事では、現場から始める**「仕組み経営」**の第一歩として、
“誰でもできる仕組み化”を進めるマニュアル化と標準化の実践法を紹介します。
1. 属人化が生む3つのリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 生産性の低下 | 人によって作業スピード・品質がバラバラ |
| 教育コスト増 | 新人教育が一からやり直しになる |
| 経営の不安定化 | キーマンが抜けると受注・現場が止まる |
属人化は、**「一人が頑張る会社」を作り、
仕組み化は、「誰でも成果を出せる会社」**を作ります。
2. 仕組み経営の第一歩は「見える化」
まずは、仕事の流れを「言語化・図式化」します。
💡 現場業務の流れ(例:空調ダクト製作)
1️⃣ 図面確認 → 2️⃣ 材料発注 → 3️⃣ 加工 → 4️⃣ 組立 → 5️⃣ 検査・出荷
この流れを一覧にするだけで、どの工程でロスが出ているかが明確になります。
“人に聞かないと分からない仕事”を“見れば分かる仕事”に変えることが目的です。
3. マニュアル化の進め方(3ステップ)
Step1:業務の棚卸し
まず、各社員が担当している業務を洗い出します。
| 担当者 | 主な業務 | 頻度 | 属人度 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 見積書作成 | 週3回 | 高 |
| Bさん | 材料発注 | 毎日 | 中 |
| Cさん | 加工指示書作成 | 不定期 | 高 |
属人度が高い業務から優先的にマニュアル化します。
Step2:マニュアルを“簡単に”作る
「マニュアル=分厚い冊子」と考える必要はありません。
現場で使うには、A4一枚・写真付き・箇条書きがベストです。
📄 マニュアル例(加工機の使用手順)
① 電源ON → ② 刃の点検 → ③ 加工位置確認 → ④ 切断 → ⑤ 清掃・停止
スマホ写真を使えば、誰でも見ながら作業可能です。
Step3:動画・チェックリスト化
文章よりも効果的なのが動画マニュアル。
短い動画を撮るだけで、教育コストを半減できます。
📹 例:「折り曲げ機の調整手順」動画(3分)
→ 新人教育時間を1/3に短縮
さらに、作業の抜け漏れを防ぐため、
チェックリスト(確認表)を併用することで、品質と安全を同時に守れます。
4. 標準化で品質と利益を守る
マニュアル化が「教える仕組み」だとすれば、
標準化は「ブレをなくす仕組み」です。
| 項目 | 標準化の内容 |
|---|---|
| 作業手順 | 図面確認→加工→検査の順序統一 |
| 使用資材 | 取引先・型番・規格を統一 |
| 品質基準 | 寸法誤差±2mm以内、安全確認3回 |
標準化を徹底すれば、再加工・クレーム・工期遅延が減り、
結果的に粗利率の向上につながります。
図解:仕組み経営の流れ
属人化
↓
業務の棚卸し
↓
マニュアル化(見える化)
↓
標準化(ブレの排除)
↓
品質安定・教育効率UP・利益安定
5. デジタル活用で仕組みを進化させる
紙マニュアルだけでなく、クラウド型共有ツールを活用すると管理が効率化します。
| ツール例 | 活用内容 |
|---|---|
| Googleドライブ | マニュアル・チェックリスト共有 |
| Notion / Chatwork | 手順・動画・改善記録の一元管理 |
| IT導入補助金 | 業務管理クラウド導入に最大2/3補助 |
→ 「教育・品質・原価」を一体で管理する仕組みが作れます。
チェックリスト:仕組み経営の進捗確認(6項目)
- 属人化している業務を特定しているか?
- 業務の流れを図で整理しているか?
- 手順書・チェックリストを作成しているか?
- マニュアルや動画を共有しているか?
- 標準化のルールを全社で統一しているか?
- デジタル管理ツールを導入しているか?
まとめ
「人が変わっても成果が出る会社」こそ、強い会社です。
属人化をなくし、誰でも同じ品質・スピードで仕事ができる環境を作れば、
教育・採用・利益のすべてが安定します。
仕組み経営は、“現場の整理”から始まり、“人を活かす会社づくり”へとつながります。


