〜資金繰り改善と顧客満足を両立する方法〜

1. なぜ在庫圧縮が重要なのか

在庫は「資産」であると同時に、「眠っている現金」です。過剰在庫は次の問題を引き起こします。

  • キャッシュフロー圧迫:仕入れ代金を払った時点で現金が減少
  • 保管コスト増大:倉庫代・保険料・管理人件費が発生
  • 廃棄・陳腐化リスク:長期滞留で不良品化、値引き販売が必要に

ある金属加工会社では、半年以上動かなかった在庫を整理したところ、1,000万円以上のキャッシュが回収でき、運転資金不足が解消しました。


2. 在庫圧縮の実践ステップ

  1. 現状把握
    • 棚卸を月次化し、滞留日数を「見える化」
    • 在庫一覧表を作成し、動かない品目を特定
  2. 安全在庫の設定
    • 過去の出荷実績から「平均出荷×リードタイム」で算出
    • 欠品リスクと保管コストのバランスを取り、上限を決定
  3. 発注方式の見直し
    • 大量まとめ買いではなく、小ロット高頻度発注へ変更
    • 発注点をシステム化して人の判断に頼らない仕組みを構築
  4. 滞留在庫の処分
    • 特価販売や中古市場への放出
    • 今後使用予定のない材料は早期に現金化

3. 納期短縮の具体策

  • 段取り替え改善:治具・工具の標準化、作業マニュアル整備
  • 小ロット多頻度生産:必要量だけ生産し、仕掛在庫を削減
  • 外注先との連携強化:発注データを共有し、納期遅延を防止
  • レイアウト改善:工程間移動を短縮、搬送ムダを削減

例:ある射出成形工場は、金型交換手順を動画マニュアル化。交換時間が平均45分から20分に短縮し、日当たりの生産回数が増加、納期短縮と残業削減を同時に達成しました。


4. デジタル活用による高度管理

  • 生産管理システム(MRP/ERP):在庫と発注点を自動計算
  • IoTセンサー:仕掛品の位置や数量をリアルタイム把握
  • BIダッシュボード:在庫回転率・納期遵守率を即座に可視化

中小企業でもクラウド型ツールを月額数万円から導入可能です。


5. 顧客ロイヤルティへの波及効果

  • 「短納期に応えてくれる会社」として選ばれる
  • 緊急オーダー時に頼られることで取引シェア拡大
  • 安定供給が評価され、長期契約や価格交渉でも有利

6. 社員を巻き込む仕組み

  • 改善提案制度:現場からのアイデアを吸い上げ、即実践
  • KPI共有ボード:在庫金額、納期遵守率を掲示板で見える化
  • 成果還元:削減効果の一部を報奨金や職場改善に再投資

ある企業では、毎月の在庫削減額をチームごとに発表。達成率が高い班には懇親会費を支給したところ、社員の自主改善が活発化しました。


まとめ図:在庫圧縮と納期短縮の流れ

[1] 現状見える化
       ↓
[2] 安全在庫・発注点設定
       ↓
[3] デジタルで精度向上
       ↓
[4] 段取り・工程改善
       ↓
[5] 納期遵守率向上 → キャッシュ創出

7. 継続改善サイクル

  1. 月次で在庫回転日数と納期遵守率をチェック
  2. 改善案を現場と検討し、翌月実行
  3. 効果を数値化し社内で発表
  4. 成果を称賛・還元して次の改善につなげる

8. まとめ

在庫圧縮と納期短縮は、資金繰り改善と顧客満足を同時に実現する重要施策です。

  • 在庫の見える化と安全水準設定でキャッシュを解放
  • 段取り替えやレイアウト改善で納期を短縮
  • デジタルツールとKPI管理で継続的に改善
  • 成果を社内で共有し、改善文化を根付かせる

これにより、資金繰りに余裕が生まれ、攻めの投資・新規開拓に挑戦できる企業体質へ変革できます。