
はじめに
建設資材の価格上昇が続く中、材料調達の見直しは中小建設業にとって避けて通れない課題です。
「1社では価格交渉力が弱い」「仕入れ先が限られている」――こうした構造的な弱点を補うために、
“共同仕入れ”と“長期契約”による安定調達が注目されています。
今回は、資材高騰に負けない仕入れ体制を作るための実践策を解説します。
1. なぜ資材価格が下がらないのか
コロナ禍やウクライナ情勢の影響が落ち着いても、資材価格が高止まりしている理由は次の3点にあります。
要因 | 内容 |
---|---|
世界的な需要増 | インフラ投資・再開発の活発化で供給逼迫 |
為替の円安 | 輸入資材コストが上昇 |
輸送コスト増 | 燃料費・人件費が物流に影響 |
このため、資材価格の「一時的下落」はあっても、中長期では上昇トレンドが続くと考えるのが現実的です。
2. 調達コストを下げる2つの方向性
(1)共同仕入れ
地域の同業者や協同組合、建設団体などで発注をまとめることで、スケールメリットによる仕入れ単価の引き下げが可能です。
💡 例:
・地元5社で「配管資材」を共同購入 → 単価を7〜10%削減
・週1回の共同配送で物流コストを圧縮
中小企業単独では難しい値引き交渉も、「グループ発注」なら可能になります。
(2)長期契約
商社や仕入れ先と一定期間(例:6か月〜1年)固定価格で契約する方法です。
市場変動リスクを抑え、仕入れ価格を安定させることができます。
📊 メリット:
・短期的な価格上昇リスクを回避
・コスト予測が容易になり、見積精度が上がる
・安定取引により優先供給を受けやすい
契約時は、「数量条件」や「納入頻度」などを明確に定めることがポイントです。
3. 仕入れ戦略を変える「3つの実務ポイント」
① 取引先を“比較”ではなく“パートナー化”する
値引き競争だけでなく、長期的な信頼関係を築く仕入れ先選定が重要です。
「支払いが早い」「発注が安定している」など、仕入れ先から見て“信頼できる顧客”になることで、優遇条件を引き出せます。
💬 実例:
「継続的な取引と月次支払いの安定性」を評価され、材料費2%割引+納期優先対応を実現。
② 材料管理を“現場任せ”から“会社管理”へ
現場ごとに担当者がバラバラに資材を発注していると、同じ材料を高値で買うリスクがあります。
会社単位で発注を集約し、発注ルールを統一することでコスト削減につながります。
📦 管理の仕組み例:
・全現場の発注を月次で集計
・主要資材は見積比較表で可視化
・使用頻度の高い資材を「標準リスト化」
③ データで価格動向を追う
感覚ではなく、データで仕入れ価格を管理します。
建設資材指数(国交省公表)や仕入れ先の月次レポートを活用し、価格変動を「見える化」することで交渉の裏付けになります。
図解:資材調達の安定化モデル
単独発注
↓
価格変動に左右される
↓
共同仕入れ or 長期契約
↓
調達コスト安定
↓
利益率改善・見積精度向上
4. 補助金を活用した体制構築
調達管理のIT化や共同仕入れ体制の整備には、補助金も活用可能です。
補助金名 | 活用内容 |
---|---|
省力化投資補助金 | 資材管理システム、在庫センサー導入など |
IT導入補助金 | 発注・見積・原価管理クラウド導入 |
経営革新計画 | 長期的な調達改革の制度後押し |
補助金を活用することで、管理強化とコスト抑制を同時に実現できます。
チェックリスト:安定調達のための5項目
- 主要資材の価格推移を定期的に確認しているか?
- 複数の仕入れルートを確保しているか?
- 他社・同業と共同発注の可能性を検討しているか?
- 商社・仕入れ先と年間契約を結んでいるか?
- 発注管理を現場任せにせず、会社全体で統制しているか?
まとめ
資材価格の高止まりは、企業努力だけでは防げません。
しかし、「共同仕入れ」と「長期契約」という二本柱を整えることで、価格変動リスクを最小化し、利益を安定化させることができます。
調達コストの管理こそが、これからの建設業経営の競争力を左右します。