中小企業が持続的に成長していくためには、既存の枠を超えた新たな挑戦が欠かせません。そうした前向きな取り組みを支援するのが、国の「中小企業新規事業進出補助金」です。本制度は、企業の新市場や高付加価値分野への進出を後押しすることで、生産性向上や賃上げの実現を目指しています。

本記事では、補助金の目的や制度内容、申請要件、対象経費などをわかりやすく解説します。


1. 補助金の目的

この補助金は、中小企業が既存事業とは異なる新しい分野への進出に取り組む際に、その初期投資を支援することを目的としています。たとえば、今まで製造業を営んでいた企業がITサービス事業を始める場合などが該当します。

政府はこれにより、企業の規模拡大、付加価値向上、そして賃上げの実現へとつなげることを狙いとしています。


2. 公募スケジュール

  • 公募要領公開日:令和7年(2025年)4月22日(火)
  • 申請受付開始:令和7年6月予定
  • 申請締切:令和7年7月10日(木)18:00

スケジュールは変更される可能性があるため、申請前には最新情報を必ずご確認ください。


3. 補助金の内容

対象者

  • 中小企業や小規模事業者など(詳細は公募要領を確認)
  • 新市場または高付加価値事業への進出に取り組む企業が対象です

補助金額

従業員数に応じて補助金の上限額が設定されています:

従業員数通常上限額賃上げ特例適用時
20人以下2,500万円3,000万円
21~50人4,000万円5,000万円
51~100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円

※補助下限額は750万円
※賃上げ特例は、補助事業終了時に一定の条件(後述)を満たす必要があります。

補助率

  • 補助対象経費の2分の1(1/2)

4. 申請に必要な要件

補助金を受けるためには、次のような条件を満たす必要があります。

(1)新事業進出であること

「新事業進出指針」で定義されている要件に該当する新規事業であること。

(2)付加価値額の向上

事業完了後3~5年の計画期間において、付加価値額または従業員1人当たり付加価値額年平均4%以上成長する見込みがあること。

(3)賃上げの実施

以下いずれかの条件を、計画期間中に満たす必要があります:

  • 一人当たり給与支給総額の成長率が、地域の最低賃金の平均上昇率以上
  • 給与支給総額全体の年平均成長率が2.5%以上

達成できなかった場合は、補助金の返還義務が発生します。

(4)最低賃金の水準

事業実施場所の地域別最低賃金より、毎年30円以上高い水準を維持すること。

(5)ワークライフバランス

「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の公表が必要です。

(6)金融機関の確認

補助事業に金融機関の資金を活用する場合、その金融機関から事業計画の確認を受ける必要があります。

(7)賃上げ特例の追加要件(※該当者のみ)

以下の2つの要件を、補助事業期間内に達成する必要があります:

  • 給与支給総額を年平均6.0%以上増加
  • 事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げ

未達成の場合、特例分の補助金返還が必要です。


5. 補助対象期間・経費

  • 期間:交付決定日から14か月以内(最大で採択発表日から16か月)
  • 対象経費
    • 機械装置・システム構築費
    • 建物費
    • 運搬費
    • 技術導入費
    • 知的財産権等関連費
    • 外注費・専門家経費
    • クラウド利用費
    • 広告宣伝・販売促進費 など

6. 注意点と申請のポイント

  • 補助金の交付額は審査で減額される可能性があります。事業計画の内容は慎重に精査してください。
  • 補助金で取得した財産は、原則として補助事業専用で使う必要があります。
  • 財産の処分には制限があり、処分時には補助金相当額を納付する義務が発生することがあります。
  • 申請書は、申請者自身が責任を持って作成する必要があります。支援機関のアドバイスは受けても問題ありませんが、丸投げは不可です。

まとめ:挑戦する中小企業を後押しする制度

「中小企業新規事業進出補助金」は、単なる設備投資支援ではなく、企業の未来への挑戦を後押しする制度です。特に、新たな市場で高い付加価値を生み出したい企業や、従業員の賃上げを重視する企業にとっては、大きなチャンスとなるでしょう。

制度の活用を検討する際は、要件をしっかり確認し、自社のビジョンと合致した事業計画を立てることが重要です。

※公式サイトの情報をもとに記事を作成しております
申請の際には必ず公式サイトをご確認ください。

新規事業進出補助金