企業経営を安定させ、持続的な成長を実現するには「予算策定」が欠かせません。予算策定は、単なる数字の割り振りではなく、企業の目標を明確にし、実行のための土台を整える戦略的な活動です。本記事では、予算策定の基本から種類・プロセス・よくある課題・成功のコツまでわかりやすく解説します。

目次

  1. 予算策定とは
  2. なぜ予算策定が必要なのか
  3. 予算策定の2つの方式
  4. 予算策定の5ステップ
  5. 予算策定の適切な時期
  6. 成功に導く3つのポイント
  7. 予算策定で起こりがちな課題
  8. まとめ

1. 予算策定とは

予算策定とは、企業の年間経営目標から逆算し、「売上」や「経費」などの予算を設定することです。しばしば「予算管理」と混同されますが、以下の違いがあります。

予算策定と予算管理の違い

項目内容
予算策定目標に基づき、事前に予算を計画・設定する
予算管理策定した予算をもとに実績をモニタリングし、調整する

予算管理の出発点となるのが予算策定です。これがなければ、進捗を評価する指標も存在しません。


2. なぜ予算策定が必要なのか?

・経営目標の視覚化

予算策定により、「何を目指すか」が明確になります。部門間で共通認識が生まれ、迅速な意思決定が可能になります。

・経営の安定性が増す

事前に予算を定めておくことで、無駄な支出を抑えられ、キャッシュフローも安定します。

・改善施策が打てる

目標からズレが生じた場合でも、早期に対応策を講じることができます。計画と実績の差分を分析すれば、次の一手を見つけやすくなります。


3. 予算策定の2つの方式

トップダウン方式

経営陣が全体予算を設定し、現場へ指示を出す方式。小規模企業やスピード重視の組織に適しています。

メリット

  • 意思決定が速い
  • 経営方針との一貫性を保ちやすい

デメリット

  • 現場の実情が反映されにくい
  • 従業員の自律性が損なわれることも

ボトムアップ方式

現場からの提案を集約し、経営陣が調整する方式。大企業や多様な現場を抱える組織に有効です。

メリット

  • 現場の声を活かせる
  • 従業員のモチベーション向上

デメリット

  • 意思統一に時間がかかる
  • 調整に労力が必要

🔽 図:予算策定方式の比較

トップダウン式       ⇔     ボトムアップ式  
経営陣主導型 現場主導型
意思決定が速い 現場の意見重視

4. 予算策定の5ステップ

予算策定は次のような流れで行われます。

① 経営計画から目標利益を設定

まず、経営方針に基づき、来期の利益目標を決定します。

② 部門ごとの予算を設定

各部署に必要な経費・売上目標を割り当てます。

③ 全体の予算を集計

部門別予算を統合し、全社予算を作成します。

④ 目標利益との整合性を確認

全体予算と利益目標が矛盾していないかを検証します。

⑤ 社内共有・実行

策定した予算は社内で共有し、実行体制を整えます。


5. 予算策定の時期

予算策定は、企業の規模や業種によって開始時期が異なります。

企業規模開始時期(決算月基準)
大企業半年前〜1カ月前
中小企業約3カ月前

早めの準備が、精度の高い策定につながります。


6. 成功に導く3つのポイント

① 具体的な事業計画に基づく

事業目標や施策があいまいだと、予算にリアリティが出ません。数字に裏付けされた明確な戦略が不可欠です。

② 実現可能な目標設定

高すぎても低すぎても逆効果です。現実的かつ挑戦的なラインを見極めましょう。

③ 各部門との整合性を重視

各部門の予算が、企業全体の方針と整合しているかを必ず確認しましょう。


7. 予算策定でよくある課題と対処法

課題対応策
目標が高すぎる根拠あるデータをもとに見直す
目標が低すぎる成長戦略とのバランスを調整
部門間に整合性がない定期的な会議・情報共有を実施

8. まとめ

予算策定は、企業の成長を支える「羅針盤」のような存在です。精度の高い予算策定を行うには、事前の準備、部門間の連携、目標の現実性が重要です。

🔽 図:予算策定の全体像

経営計画 → 目標利益設定 → 部門別予算 → 全体予算 → 共有・実行

また、予算策定は一度作って終わりではなく、定期的な見直しやPDCAの仕組みづくりが成功のカギとなります。今後の企業成長を見据え、戦略的な予算策定を行いましょう。


事例紹介(実例の差し替え)

たとえば、ある地方製造業A社は、従来トップダウン型で予算を設定していましたが、現場の声が届かないことが課題でした。そこでボトムアップ方式を導入。現場の改善提案が反映され、設備投資の効率化に成功。結果、翌年度のコスト削減率が15%を超えました。