
― 再建の鍵は“利益”ではなく“現金の流れ”にある
■ はじめに:黒字でも倒産する理由は「資金繰り」
経営者からよく聞くのは次のような言葉です。
- 「黒字のはずなのに現金が残らない」
- 「今月の支払いは乗り切れたが、来月が心配」
- 「銀行に“資金繰り表を出してください”と言われたが作れない」
実は、中小企業の倒産理由の多くは“赤字”ではなく、
**資金繰りの悪化(キャッシュ不足)**です。
だからこそ、経営改善計画では「資金繰り表」が最重要資料となります。
■ 資金繰り表とは?
資金繰り表とは、毎月の
入金(売上・借入金)と、出金(仕入・人件費・返済等)を一覧にした表です。
損益計算書(PL)は「利益」を表しますが、
資金繰り表は「現金の動き」を表すため、
経営の健康状態を最も正確に示す指標となります。
■ なぜ資金繰り表が重要なのか?
🔵1. 経営破綻リスクを早期発見できる
資金残高が減っている原因は
・売上減少
・売掛金の回収遅延
・粗利率低下
・返済負担増
など多岐にわたります。
資金繰り表をつけることで、危険な兆候を早期に発見できます。
🔵2. 金融機関との信頼関係を強化できる
銀行は“返済能力”を最も重視するため、
資金繰り表の有無は企業姿勢の判断材料になります。
🔵3. 経営改善計画の実行管理がしやすくなる
計画と実績を比較することで、
改善策が効果を出しているかを確認できます。
■ 資金繰り表の基本構成
資金繰り表は以下の3部構成で作成します。
1️⃣ 期首残高(月初の現金)
2️⃣ 入金の部(売上入金・借入金・その他)
3️⃣ 出金の部(仕入・人件費・経費・返済・税金 など)
4️⃣ 差引過不足額(当月現金増減)
5️⃣ 期末残高(翌月へ繰り越し)
💡ポイント
期末残高がマイナスになる月がある場合は、早期に調整(融資・支払い変更)が必要。
■ 資金繰り表作成で“必ず押さえるべき3つのポイント”
①「入金のタイミング」を正確に反映する
売上計上日と入金日は違います。
多くの企業がここを曖昧にして資金が狂います。
- 売上:9月
- 回収:10月末
- 支払:9月末
この場合、9月の資金繰りは「赤字」になることがあります。
②「返済金・リース料・税金」を忘れない
特に忘れやすいのが固定の支払い。
・借入返済
・リース料
・社会保険
・消費税・法人税
これらは突然やってくる「資金ショック」につながりやすいため注意が必要です。
③「安全資金(運転資金1〜2か月分)」を確保する
最低1か月、理想は2か月の現金を確保することで
資金ショートのリスクを大幅に下げられます。
■ 金融機関がチェックしているポイント
銀行は資金繰り表を見る際、次の点を重点的に確認します。
- 一時的なのか、慢性的な資金不足か
- 入金より支払の方が先行していないか
- 回収・支払サイトに無理はないか
- 毎月の返済額がキャッシュフローに見合っているか
- 経営改善策を反映した改善見込みがあるか
💬 資金繰り表を出すだけで、銀行からの信頼度は大きく向上します。
■ 経営改善計画に使う「3〜12か月」の資金繰り表
支援機関の現場では、
以下のように期間を使い分けます。
- 短期(3ヶ月):足元の資金状態を把握
- 中期(6ヶ月):資金改善策の効果を確認
- 長期(12ヶ月):返済計画・融資必要額の検討
特に金融機関に提出する場合、
短期・中期・長期の3種類を並べると説得力が高まります。
■ 資金繰りを改善する“5つの実践策”
① 売掛金の回収短縮(締日変更・早期回収)
② 仕入サイトの延長(交渉・見直し)
③ 在庫削減(ABC分析・発注システム)
④ 不要コスト削減(固定費の見直し)
⑤ 返済条件変更(リスケ)
改善策は「資金繰り表に落とし込んで初めて効果が見える」点が重要です。
■ 経営改善計画での“資金繰り表の役割”
資金繰り表は、
単に現状を示すだけではありません。
- 計画の実現可能性の証明
- 金融機関との協議材料
- 月次モニタリングで改善状況の可視化
- 追加融資の根拠資料
- 経営者の意識改革ツール
つまり、経営改善計画の中心にあるのが資金繰り表です。
■ まとめ:経営改善の成否は「資金繰り」で決まる
資金繰り表は、経営改善計画の“心臓部”。
これが正しく作れる企業は、再建成功率が格段に高まります。
- 未来の資金予測
- 改善の実行度
- 金融機関との信頼
すべてをつなぐのが、資金繰り表の役割です。
💬 利益より、まず「現金」。
これが経営改善の鉄則です。


